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「…え?」


毎日のように聞く女性の声。

ふと振り返ると、真後ろになんとビッキー本人が立っていたのだ。

全く気配を感じなかったせいか、ジムは首を捻ったまま一時停止し


「うわああっ!?///なな…なんでいるんだ、お前!」


顔を真っ赤にして退った。

まさか…いや多分…

今の言葉絶対に聞かれた!


「何よその態度!人を化け物みたいに!」

「だ、だってさ!」


グッと顔を近づけるビッキーに心臓の鼓動が早くなる。

彼の頬はますます赤くなる一方だ。






(上手いわよ、リッキー!)

ナイスアシストをした彼の背中をサラが叩く。

ここまで来れば話は早い。








「で?私の事が何?」

「あ?ち、違う!今のはリッキーが無理やり言わせた事であって俺は……なぁ?リッ…」


気づいた時にはリッキーどころか、ナイジェルもサラも…周りには誰もいない。

人気はなく、廊下は突き当たりまでシーンと静まり返っていた。


「あ…あれ?」

「誰もいないじゃない!リッキーを悪者にしようとするなんて私が許さないわよ!」


クッソ、アイツら逃げやがった!

なんで普段馬鹿みたいに空気読めないくせに、こんな時に気遣い能力を開花させてんだ!







……………


一瞬の隙をついて、廊下側の壁に隠れた3人はこっそりジムとビッキーの様子を観察している。

「なんかビッキー怒ってますよ?」

「また怒らせたわね。全く女心ってのをわかってないんだから」

「俺達でなんとかしてあげられませんかね?」

「ほっとけ。こーいう男女のいざこざは、首を突っ込むとロクな事にならねぇからな」

「貴方、さっきまで首どころか肩まで食い入る程突っ込んでましたけど」


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