……………

「フラれない告白の仕方?」

リッキーはきょとんとした顔で、自室まで質問に来たジムの顔を見た。

「そうだよ。お前モテんだろ?女をコロッと落とす必殺テクニックとか持ってないのか?」

「そんなものあったら俺が教えて欲しいくらいですよ」

「じゃぁ何でお前そんなにモテるんだよ」

「さぁ」


期待していた程、リッキーは女を落とすテクを星の数程知ってる訳ではなさそうだ。


「はぁ…」

「要するに顔が良いか悪いかの問題って事だ。お前は一生かかってもモテる事は出来ねーな(笑)」

笑いながら頭を軽く叩いてくるナイジェル。

残念そうにしているジムに、状況はよく理解していないがリッキーは罪悪感を覚えたらしい。


「うーん…そうですねぇ」

何か手がかりがないかと周りを見渡してみる。


「あ。アレなんて良いんじゃないですか?」

「ん?」

彼がようやく見つけ出した唯一のテクニックが、テレビの中に隠されていた。

今はお昼の1時。

テレビは世のおば様方が楽しみにしている昼ドラの時間だ。


『お黙りなさい!このメス豚!』

『大丈夫。僕が君の罪を全て受け入れてあげるから』

『ふたりはガーネット婦人の策略とも知らず、愛と金の地獄へと堕ちていくのであった…』





「あれが…何?」

「あれを真似すればいいんですよ。堕ちていけばいいじゃないですか」

「何で俺が堕ちないといけないの!?嫌だよ!どんなドロドロな展開を望んでるんだ、お前は!」


「ダメですか、良いアイデアだと思ったんですけどね」なんて笑いながら、リッキーは顎に手を当てて考えるポーズへと入る。


「どこが良いアイデアだ。大体、あんなもん冴えない俺がやったらそれこそアウトだろ。な、ナイジェル!」


「ダメだッ!!!」

予想以上の彼の大きな返事に、ビクンと体を一瞬震わせるジム。

「ど、どうした?」

「その男はあの社長令嬢とデキてんだよ!父親の遺産を奪い取ろうとお前に近づいているだけなんだ!」

「ちゃっかり観てんじゃねーよ!」


テレビの前に正座しているおじさんの後頭部にリモコンを投げつける。

はぁと疲れた息を吐きながら、彼はリッキーに再び顔を向けた。

「なぁ、他に何かないか?見ての通りこの手の話で頼りになりそうな奴はお前しかいないんだよ」

「そんな事言われても」



「僕…とっておきの女の口説き方知ってるよ」


すると突然、廊下の向こう側から謎の声が聞こえてきた。

色黒変人タイツ男のボビーだ。

一同はシーンとなって、その怪しい顔を数秒間言葉なく見つめていた。


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