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最初はグー、じゃんけん…


























「…どうぞ」

「アンタさぁ、そんなにボビエに近づきたい系なわけぇ〜?マジキショイんすけど!ストーカーっつーのよ、それマジで!」


じゃんけんに負けて彼女にコーヒーを出したのは案の定、提案をしてしまったリッキー君だった。

彼女を少しでも「お客さん」なんて思った自分が憎い。

今になって凄く後悔している。

彼は何故か謎のカフェ店員の格好をし、目を閉じたまま動かない。


「っていうか熱いコーヒぃ!?ボビエ、キャット舌だからアイスコーヒーしか有り得ない系なんだけどぉ〜!」

(その顔で「キャット」発言…全国のキャットに謝れ)

「仕方ないし〜!許してもらえる事を神級感謝しなさいよぉ〜!」


(神級感謝って何?全国の神に謝れ)



「ね、どうなってる?」

「リッキーの奴、ずっと目を瞑ってる。極力顔を見ないようにしてるんだろ」

「嫌ー!私のリッキーがぁ!」

じゃんけんに勝利した4人は、遠くから観察を続けている。

客観的に見ている分には、なんだかちょっと楽しそうだ。



(ホント腹立つな、この人。
いやでも目を合わせちゃいけない…合わせたら、ああなってこうなって…)


しかし、人間とはおかしな生き物だ。

見てはいけないと思えば思う程、余計に見たくなってしまう生き物であって…



チラッ


ボビエ「…ん?」


ガランッ!

リッキーは思わず持っていた盆を床に落としてしまった。


(うわ!今、目が合った!有り得ない系!神級ヤバイ!目が腐ッ…)



彼が動揺している事も姿を見ればわかるようで、彼女もハッキリと不信感を覚えた。

「ちょっとアンタ〜!マジいい加減にしてくんない!?さっきから何でそんなにボビエばっかチラチラ見るわけぇ!?」


ボビエの問いかけに、顔を引きつらせて思わず日差しを遮るように手を前に出す。

「ちょぉ!?何でって訊いてんでしょ!」

「えっと……そのっ…」


(…っそんな…言えない!気持ち悪すぎて、つい見てしまうなんてっ!)


じゃんけんに勝った4人も、見逃すまいとリッキーを見つめている。

そしてボビーはニヤリと気持ち悪く笑っていて。

もう、言い訳がこれしか思い浮かばない!

頭がパニックになったリッキーは、何も考えずボビエの顔を真っ直ぐ見る。

もうまともな思考回路が働かなくて

笑顔を作り、照れ臭そうな素振りを見せて言った。


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