「ごめんね、リッキー!買い物付き合ってもらっちゃって♪」

「良いですよ」


とある休日。

ビッキーにショッピングに付き合って欲しいとお願いされて、終わった今の時間は午後5時。

休憩時間などなく、次から次に店を飛び回り。

買い物をする時の女の子のパワーって凄い。

帰り道は彼女が買い込んだ服や化粧品、アクセサリーやバッグなどをリッキーが持っており、あまりの重さに腕がちぎれてしまいそう。

ジムはいつもこんな体力のいる買い物に付き合ってあげているのか。

本当に人が良いんだな。


「たくさんお買い物しちゃった!これでまた来週までは買い物はしなくて良いかな♪」

「来週またこの量の買い物をするつもりですか?逆に凄いですね…一体あの狭い部屋のどこにそんな収納スペースがあるんですか」

「女の子はね、男の子の知らない秘密がいっぱいあるんだよ!」


悪気なく嬉しそうにスキップしているビッキーに、彼はタジタジしている様子。

でもやっぱりこうやって楽しそうに笑ってると、無邪気で可愛く見える。

我が儘言っても許してしまうジムの気持ちはなんとなくわかる気がするな。


「そうですか。俺にも教えて欲しいですね」

「ダメだよー!いくらリッキーで…」

「…?どうしたんですか?」


言葉が途切れ、リッキーは彼女の向いている方向に顔を動かした。

誰かが道の真ん中に立っている。

どこかで見た事…


あ。


そこにはボーダーシャツにジーパンを穿いたボビーそっくりの青年が立っていたのだ。

ふたりは慌ててその人物に駆け寄る。


「ボビー?アンタ、ちょっ…どうしたの?その格好?」


至って普通の格好なのだが、ボビーにとってはそれが普通じゃない。

普通の格好が普通じゃないのだ。

するとその青年ボビーは、話しかけてきたビッキーに対して首を傾げる。


「お姉さん誰?」

「えっ」


彼の言葉に脳が一時停止する。


「え?アンタ…ボビーじゃ…」

「誰?そのボビーって。あ、それより僕もう行かなきゃ!それじゃ!」


軽く手を振り、ふたりの前から颯爽と消えてゆく洋服ボビー。

ちょっと待て。

事態の整理がつかない。


「え?え?ひ…人違い!?」

「記憶喪失?馬鹿でも記憶喪失になるんですか?」


はたまたクローン人間か?ドッペルゲンガー!?

世の中には自分に似た人間が3人は存在するというが。

あそこまで同じ人間が存在するものなのか。


「ヤダ!私達、怖いもの見ちゃったかも!どうしよう!」

「お、落ち着いてください!多分今のは…えっと…物凄くボビーに似た色黒で白髪の外国人で……あっ…」


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