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……………

父親は座っている若者ふたりに、ひとつの瓶を持ってきた。

蓋の先端にボビーの彫刻が施されている、いかにも怪しい瓶。

しかも中には更に怪しい緑色の液体が入っている。


「何ですか?これは?」

頭を抑えながら訊いた彼に父親は答えるが。


「…フガフガ…ふぃ…ひょぉ」

「わかんな…いや、申し訳ございません。
日頃の努力不足、不摂生がたたり、こんなわたくしどもではお言葉の意味が理解出来ません。全てわたくしの責任です」


土下座をしながら謝っている。

見兼ねたナイジェルが、リッキーの声でだるそうに言った。


「『これが入れ替わった精神を元に戻す秘薬じゃ』…だって」

「貴方わかるんですか!?それなら初めから翻訳してくださいよ!」


ボビーの父親は、またモゴモゴ意味のわからないボビー語を話し始めながら蓋を外す。

そしてそれをコップ4分の1程注いだ。


「へぃぃ…ふぃ…」

「『これを飲め』って」


よし、とふたりは注がれたコップを手に取る。

顔を近づけても無臭だが、明らかに着色料が入っているようだ。

体に良いとは言えない液体の色。

しかし今の俺達は体の心配なんかしている場合じゃない。

最後にお互いの顔を睨み合った。


「いいか?これで戻らなかったら、もう一生戻れないと思え」

「そんなの死んでもお断りです」



いっせーのっ…



一気にその謎の液体を飲み干す。


その瞬間。


「なっ!?」

「んっ!?」


父親は突然持っていた杖を床に置き、そして…



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