14
…んぐッ。頭痛ぇ…
どうなったんだ、俺は。
そうだ。
確かジム達のせいで色々やらされて…
そんでサラに…
「…サラ!?」
ソファーからガバッと起き上がったナイジェル。
暗い瞼の裏側から次に広がったのは、いつもと変わらない見慣れたメインルーム。
「……っ…」
「あ、起きたわよ!クレオス!」
「ジムだ。大丈夫か、ナイジェル?あの時のリッキー、相当殺気みなぎってたもんな」
隣にはジムとビッキー。
どうやらふたりが、眠っていた俺の傍に付いていてくれたようだ。
彼は首を振って何かを探し始める。
「サラは?」
「部屋に戻ったぞ。悪かったな、計画全部バレちまって」
「そうか」
残念そうにも聞こえる彼の声。
ナイジェルは遠くを見るような目で、ただ前にある壁に掛かった写真を見た。
「まぁ、元気出せって!結構良い雰囲気になってたぞ、お前ら!」
「ははっ。まぁな」
彼は何か考えているのか、一時目を閉じた後ソファーから立ち上がった。
「もう大丈夫なのか?」
「あぁ。慣れてるから、こーいうの」
こういうのに慣れているのもどうかと思うが。
いつものようにポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつける。
そしてまたいつものように口から煙を吐いた。
「誰の助けもいらねぇ」
「…っ?」
ジムとビッキーは目を丸くして彼の顔を見る。
大きな独り言でも話す口調で、下を向いていたナイジェルは口を開いた。
「俺はこのまま、何も変わらず素の俺で生きていく。
間違ってたんだよ、俺。アイツが言ってたように無理に着飾って綺麗な部分だけを出そうとしたって…結局それは自分じゃねぇって事。
俺だってそんな自分に嘘をつく生き方はしたくねぇし、周りだってそれを望んでなんかいねんだよ」
「ナイジェル…」
「サラはありのままの俺でいて欲しいと言ってくれた。だったら俺はこのままでいる。
ダメな男と言われたって構わねーし、ダサいオッサンと笑われたって痛くも痒くもねぇ。
これが『俺』なんだからな」
彼は傍にいてくれたふたりにお礼を言い、その場から立ち去ろうとするが…
ふと最後に何か思い出したように振り返った。
「あ…そうだ。後でリッキーが来たら言っといて欲しいんだけど」
「なんだ?」
「確かにルックスや若さじゃ、お前には勝てないかもしれねぇ。だがな…」
ニヤリと自信満々に笑う彼。
「だからって一歩も引く気はないってな」
彼はタバコを指に挟み、お世辞にも姿勢が良いとは言えない歩き方でメインルームから出て行った。
「なんだかなぁ。難しいよな、アイツら」
「何が?」
「まぁ…お前も時期が来ればわかるって」
最後にジムはビッキーの頭をポンポンと2回程軽く叩いた。
fin
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