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隠れている連中がその一声をじっと待つ中、とりあえずふたりは隣同士ソファーに座った。
「イメチェンねぇ。あ、そういえば貴方最近、若者向けの雑誌とか読んでたでしょう?ジム達が大騒ぎしてたわよ」
「それは誤解だ。あの馬鹿共の事は気にすんな」
「ふーん。それとは関係あるの?」
「まぁ…あるっちゃあるような」
……………
「あーもう、じれったいなぁ!」
「言っちゃえよ!『どうだ?今日の俺、格好良いだろ?』って!」
なかなか格好良いと言わないサラに、徐々にじれったさを感じてきたビッキーとジム。
しかしあのクールなアイツが、そう簡単に…しかもあのナイジェルに対してそんな褒め言葉を使うはずもない。
……………
「タバコは?」
「タバコは…今だけ禁煙中…みたいな(本当はめっちゃ吸いてぇけど)」
「禁煙したの!?へぇ、人間変わろうと思えば変われるものなのね」
「…ま…まぁな……ん?」
ナイジェルが何気なく視線を逸らすと、ジムとビッキーが何やら怪しい動きをしていた。
『行け!』『攻めろ』とジェスチャーで表現している。
声は聞こえないものの、そのうるさい動きや口パクに彼は嫌らしく眉間にシワを寄せた。
「どうしたの?」
「あ…いや、なんでもない」
そう、と彼女は特に気にする様子もなく肘を自分の膝に置いた。
「………。」
「あ…あのさ、サラ」
「あ、そうジムと言えば!さっきからジムどころか誰もいないのよ。ナイジェル、どこ行ったか知らない?」
「サラッ!」
突然の彼の大きな声。
この時ばかりは、サラもピクンと身を縮めた。
何か怒らせる事でもしたのだろうか?
そっと彼の顔を下から覗いてみる。
「ど、どうしたの?」
「あ…いや、悪い」
なんだか普段とは違う空気のナイジェル。
服装が違うから?
それとも雰囲気が違うから?
彼は前かがみに体を倒し、サラから丁度顔が隠れるように頬杖をついた。
「ナイジェル…」
「その…なんてーかさ…今日の俺ってどうなの?」
「……っ…」
「だから…良いか悪いか…みてーな…」
珍しく目も合わせてくれず、歯切れも悪い。
その姿で彼女はようやく彼の気持ちがわかったらしい。
可愛いとでも思ったのか。
一時の間を置いて、サラはクスリと笑った。
「良いに決まってるでしょ?格好良いわよ、ナイジェル」
「……っ」
……………
ビッキー&ジム「「言ったぁぁぁ!!!」」
……………
ふと視線を戻すと、そこには笑っている彼女の姿があった。
普段はあまり自分の前では見せてくれない優しい顔。
「サラ、お前」
「でもやっぱり…好きじゃない」
「………っ」
……………
「「…え…?」」
……………
彼女の突然の一言に言葉を失う隠れていた連中。
もちろん、それは目の前にいたナイジェルも同じで。
予想はしていたが。
ここまでハッキリ言われるとは思っていなかっ…
「私はやっぱりいつものナイジェルの方が、ずっと似合ってると思うな」
「…え?」
「なんかだるそうで、どこかやる気がなくて。いつも周りからだらしないとか言われててもなんにも気にしない。それが貴方でしょ?
必死に着飾って格好良く見せようとしてるのはわかるけど、無理してるのバレバレ。確かに見た目は良いけど、でもこれは本物の貴方じゃない」
サラはそう言いながら、彼の胸ポケットからタバコの箱を取り出した。
「はい」
「っ…」
「いいから」
一本を箱から取り出すと、それを彼の口へと持っていき咥えさせる。
「本気なのか?」
「当たり前でしょ」
「………」
「早く…」
黙って顔を見たナイジェルは
彼女のつけたライターの炎に、そっと自分の咥えたタバコの先を近づけた。
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