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「………。」
もちろんの事だが、当のナイジェルは意味がわからず口をだらしなく開いたままフリーズ。
そこでようやく部屋の明かりが全てつき、辺りの状況を確認する事が出来た。
どうやらここはパーティ会場のような大広間らしい。
「よ!ナイジェル、驚いたか?」
ステージ裏からひょっこり出てきたのは、初めて姿を現したジムだ。
何故かこの会場に合わせたタキシード姿。
「あ…おい、ジム!何だよ、これは!?」
「まぁまぁ、落ち着けって!」
何がなんだかわからないナイジェルをジムが宥めていると、彼に続いて他メンバーもぞろぞろと姿を現す。
「今日はね!ナイジェルの願いを皆で叶えようって事で、秘密でこの企画を用意したんだよ!」
「全く!ひとりで悩みを抱え込むなんて、君はなんて寂しいオッサンなんだい!」
「俺達、今日は全力で貴方をサポートしますから!一緒に頑張りましょう!」
この一瞬の時間で着替えたらしい。
バニーガールの格好をしたビッキーとボビー、そしてスーツを身にまとったリッキーだ。
「おい…俺の願いって…」
「とぼけんなよ!知ってるんだからな、俺達!お前が若返りたいと思ってる事。少しでも格好良くなりたいって思ってんだろ?」
「…は?」
ジムの言葉になんとも気の抜けた返事が返ってきた。
ぽかんとしている彼の表情からして、どうやら素のようで…
「…は?」
ジム一同は思わず同じ声を返してしまった。
恥ずかしがってるのか、と期待する言葉を待ってもナイジェルの顔は変わらない。
「いやいやいや、待って。だってさ…この間お前、休憩室でひとりコソコソと若者向けの雑誌とか読んでたじゃん?」
「若者向けの雑誌?…あぁ、アレか。あれこの間居酒屋で隣にいた親父に頼まれてイカゲソと交換してやったもんだから。暇だから読んでただけだし」
「いやいやいやいやいやいや。だってさだってさ…美容室とか行ってたじゃん」
「美容室…あぁ、それか。近所のババァに買い物の荷物持ちやれってパシられただけだよ。別に俺が散髪してもらったわけじゃねーし」
「「………。」」
企画を立てた張本人へ一斉に攻撃の目が向けられる。
ビッキー「パーカー…これは一体どういう事なの?」
「ちょ…待って、こんなはずじゃ。つかジムね。ジム」
リッキー「とりあえず…その名探偵みたいな蝶ネクタイで首を締めましょうか」
「ちょ…待って待って。やめようね。名探偵が殺されちゃ誰も事件解決出来ないからね」
ボビー「あ、あのステージの男の人。もう荷物をまとめて帰る準備を始めてるよ」
「ちょっと待ってください!なんなの!?名前を名乗る前にもう出番終了!?」
なんだか諸事情により混乱してきたステージ。
ナイジェルも額に汗マークを流しながら、ジムが攻められるグダグダな会話を黙って聞いていた。
「だから!こんな事になるなんて思ってなかったから!」
「ふざけないでよ、マルフォイ!一体いくらお金かけたと思ってんの!」
「そうだ!ビッキーちゃんに全額返金したまえ!」
「全額はおかすぅぃぃいい(おかしい)だろ!皆でワリキャン(割勘)にしたはずだ!」
「どうでもいい所で話に割り込んできた!」
周りに攻め立てられ、誰にも助けてもらえずに逃げ惑うジム。
「はぁ…」
そんな彼の姿を見てナイジェルはいつも以上の大きなため息をつき、手慣れた手つきでタバコに火をつけて一服した。
「若返りか…まぁ…たまにはいいかもな」
「「へ?」」
大きな独り言に、全員の視線が使えない地味男から一斉にナイジェルの方へと向けられる。
「今…なんて?」
「俺もいい加減このダメなオッサンの雰囲気から卒業しねぇと、一生独身になるかもしれねぇしな。そろそろイメチェンでもしようと思ってた所だし」
口から煙を吐きながらニヤリと笑ったナイジェル。
その視線の先には、可哀相に胸ぐらを掴まれているジムの姿が。
「お前って奴はぁ!なんて空気が読める男なんだ!今のお前、俺にはまるで映画俳優のように映ったぞ!お前のダンディズムはやっぱ世界一だ!」
「ダンディズム世界一とか言われたら、若返る気失せるだろーが。怒」
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