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「コノォォ!このくらいの失恋じゃ負け…ギャッ!」
最下位から這い上がってきたボビーだったが、ゴール手前に倒れていたサラとリッキーに躓いてまたもや転倒してしまった。
「ァア!!もう何なんだい君達!どうしてこんな所で寝ているん…フギャッ!」
「きゃぁ!イッターイ!」
「痛てて…。お前らなんでこんな所で寝てんだよ!」
その後に走ってきたビッキーとナイジェルも、人溜まりに足を取られて転倒。
「仕方ないでしょう!?足くじいて立てないの!」
「きゃぁああ!リッキー大丈夫!?」
「あー、もう何なんだよ!ゴールは目の前だってのに!」
「……(抜け駆け)」
「「コラァア!!ボビー、お前何ひとりだけ抜け駆けしようとしてんだ!」」
そっとケンカの輪から抜け出そうとしたボビーに暴力軍団が群がる。
「僕は君達みたいに暇じゃない!切実に豪華商品が欲しいと思ってるんだ!」
「させるかぁッ!優勝は私よ!」
「いや、俺だ!テメーら、たまには年長者を敬ったらどうだ!?」
「真剣勝負に年齢なんて関係ないわ!焼酎一年分は私のものよ!(※商品は焼酎ではありません)」
「もうダリーよ!面倒くせぇ!」
「「リッキー!?」」
ゴール直前でゴチャゴチャとケンカを始め、ついに殴る蹴るの攻防戦がスタートした。
もうこうなってしまうと誰にも止められない。
「ちょっと!皆さん、落ち着いてください!」
アナウンサーも声をかけるが効果なし。
もうこれは警備員が出動しなければならないか…
そう思った瞬間だった。
「……ッ!!」
混乱と同時にボビーの踵がゴールラインにピッタリと重なった!
「「………!」」
周りで見ていた全員も、そしてボビー本人も驚いた表情で固まる。
会場全体も結果に注目してしまい、言葉を失っていた。
「や…やったぁ!僕が優勝だぁあああ!!」
「決まったぁ!!優勝はボビー選手!ボビー選手だぁ!」
「「キャァァァァ!!!」」
予想だにしていないトラブルの末、優勝はなんとあのボビーに決定。
アナウンサーの最高潮の声が響き渡り、観客も驚異の逆転劇にスタンディングオベーション。
勝った本人も喜びのあまり感極まって跳ね回ってしまう。
その他の4人は「そんな…」と、悲しみに打ちひしがれてしまったが…
「キャッホー!豪華商品ゲットだぜ!」
「…おい」
「あ?今ちょっと忙しいから話しかけないでくれたまえ」
「おい!」
「だーかーら!」
緑タイツの背中がポンポンと軽く叩かれる。
そして振り返ったそこには、乱闘にひとりだけ参加していなかったジムの姿があった。
「優勝は俺だ」
「……へ?」
言葉の意味がわからず、大きな目を点にしてしまったボビー。
競技に参加していたメンバーも目が点。
アナウンサーと解説員も目が点。
もちろん観客もスタッフも全員の目が点。
「悲しいよなぁ。だってお前らどころかこの会場にいる人全員、歩いてゴールする俺の存在に気づかないんだから」
「「…………。」」
醜い乱闘を繰り広げていたメンバーに、ラストの冷たい風が吹きつけた。
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