……………

「競技が始まって早々、大波乱が巻き起こっています!では次の競技に参りましょう!第2競技は障害物競争です!」


アナウンサーの声が再び会場中に響き渡った。

先程とは違う運動会の定番メロディが流れてきて、スタッフの皆さんがせっせと競技の準備に取り掛かる。


「この競技のルールを説明します!なんか邪魔いものがあるので、それを抜けてゴールまで走ってください!それでは始めましょう!」


ジム「実況者!簡単すぎるだろ!もっとちゃんと説明し…」

「それでは始めましょう!」

「無視するな!なんでおな」位置について、よーいバンッ!


「って、オイ!スタートも無視か!?いい加減人の話を聞け、お前ら!」




……………




「さぁ、一斉にスタートしました!現時点でトップはナイジェルさんです!意外と早い動きも出来るんですねぇ」


6人は網をくぐり抜け、平均台を渡り、重い俵を運び…

続くのは一般的な障害ばかり。


なんだ簡単じゃないか、と余裕をぶっこいて突破していたら、何やらゴール手前に見慣れないものが設置されていた。


「…ッ?何だこれ!?」

先頭のジムの前に、小屋のような建物が立ち塞がっている。

並んで6つあり、屋根が青や赤にそれぞれ塗り潰されている。


「何だこの小屋?これに入れという事なのか?」

「おお!なんだい、この犬小屋は!」

ジムの後ろから来たボビーも驚いて目を見開いた。


「犬小屋じゃないだろ。とりあえず、これは個人に用意された建物らしいな。ちゃんと6つあるし、それぞれのイメージカラーの色で屋根が塗られている。それにほら!ちゃんとご丁寧に名前も書いてあるぞ」

これはジムは青の屋根の小屋へ、ボビーは緑の屋根の小屋に入れという意味らしい。


「よし、じゃあ急ごう!後ろの奴らに追いつかれる前に!」

「OK★まぁ地味に頑張りたまえ、ジム君!」

「お前ウザいな、やっぱり★」


他4人が追いつく前に、それぞれの部屋に入ったジムとボビー。

追いついたメンバーもすぐに状況を理解し、次々と小屋へ入ってゆく。


全員が入った所で、とても運動会とは思えない程会場は静寂に包まれた。



アナウンサー「ところで解説員の三浦さん、あの小屋の中は一体どのような仕掛けがされているのですか?」

三浦さん「はい。解説員の三浦です。あの中にはですね、6人が怖いと思うものや足止め出来るようなものをそれぞれ入れておきました」

「ほう!では怖いものに当たった人は真っ先に出てこれるかもしれないわけですが、足止めに入った人はなかなか出てこれないと…ん?でも三浦さん、それって不公平なんじゃ…」

「はい。解説員の三浦です。不公平ではありません」

「どうしてですか?三浦さん」

「はい。解説員の三村で…あっ間違った。三浦です。どうして貴方にそこまで訊かれないといけないのですか?実況者の金沢さん」

「私は金沢ではなく花澤で…」






「ぎゃあああああああ!!!」





穴埋め時間。ナレーションふたりのどうでもいい会話の途中、大きな叫び声がどこかの小屋から聞こえてきた。

「おっと突然の叫び声!この声は赤い屋根の小屋から…リッキー選手のようです!一体彼の身に何が起こっているというのでしょうか!」


「はい。解説員のみうです。これは予測していたと言っても過言ではないでしょう」

「今、微妙にはしょりましたよね!?ぶっちゃけそのキャラクター面倒臭くなってきてますよね?」

「解説員のみです。そんな事ありません、とりあえずあの部屋の中に何が入っているのか気にならないのですか?」

「ああ、そうだった!あの悲鳴を上げたリッキー選手の小屋には何が入っていたのですか!?」

「解説員の…地縛霊です」

「ちょっと!!はしょりすぎて、なんかもう意味変わってるから!つか地縛霊!?どーやって入れたの、スゲくね!?」

「ちなみに他の部屋には、ビッキーさんの部屋にリッキー君の指人形1個(興奮で30分は動けないと予想)、

ジムさんの部屋には輪ゴム1本(地味に遊んで40分は動けないと予想)、

ボビーさんの部屋には手鏡を1つ(鏡に映った自分に見惚れて1時間は動けないと予想)用意しております」

「あの人達そんなんに引っかかってんの!?どんだけ幼稚な人間!」



ガチャン。


ひとつの小屋の扉が開く音。

その音に会場の視線、実況者達の視線がその小屋へ向かう。


「お!早い!誰かがもう小屋の中から出てきました!先陣を切って一番に飛び出してきたのは…」


ジム「………(怒)」


「おーっと!出てきたのは輪ゴム一本を握ったジム選手です!なんという無気力顔!ファンサービスとか、なんかもうそういうの一切なしです!」

「そりゃ無気力にもなるだろうが!個室に輪ゴム一本だけって…俺の事なんだと思ってんだ!?」


彼は周りの人間がまだ出てくる気配がない事を確認し、小走りでゴールへ向かった。

「ったく、こんなもので一位になったって嬉しくないんだよ…」


口を尖らせ、ブツブツ文句を言いながら走るが。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ…」


「またリッキーか…。今日アイツ叫んでばっかりだな」


「ぎゃぁぁぁああああ!!」


「…ん?」


「ぎゃぁぁぁああああ!!」



バコンッ!!


「痛ッ!」


アナウンサー「あぁーっと!なんという事でしょうか!先程まで個室で雄叫びを上げていたリッキー選手が小屋の壁を破壊し、そして前を走っていたジム選手の頭を踏み台にして物凄いスピードでゴールへと向かっています!」



「ぎゃあ…」


「そして一着でゴールイン!…ってあれ?どこまで行っちゃってるの!?」


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