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……………
「それでは早速、第1競技に参りましょう!最初の競技はパン食い競争です!」
実況者のコールが終わると、6人は係員によりスタートラインへ誘導される。
「それではここで簡単にルールを説明しましょう。
まず皆さんの両腕を背中側で縛り、手を使用不能にします。
そして吊るしてあるあんパンを口で咥え、そのままいち早くゴールした人が勝者となります!」
ジム「そんな事一々説明してくれなくても知ってるから!」
「それでは始めます!位置について、よーい…」
真剣な表情で構えに入る。
バンッ!
空砲が鳴り響くと同時に、一斉に全員が地面を勢いよく蹴った。
「さぁ、遂に第一競技がスタートしました!現在トップは…リッキー選手です!いやぁ、若いって良いですね」
走りながら後ろを軽く振り返ったリッキー。
(ハハッ。なんだかんだ言っても、やっぱり歳には敵わないんですね。このままパパッとゴールしちゃ…)
「あ…!」
突然今まで調子良く走っていたリッキーの足が止まった。
初めて見る、目の前の光景に呆然と立ち尽くす。
「何っ…これ…」
彼の視界に入っていたのは、何十個と並んで吊されているパン。
競技に参加している人数は6人なのに、パンの数はザッと数えても20〜30個はある。
「なんでこんなに多いんだろ。何かの罠なのかなっ……?」
ボビー「ウルァァ!リッキーテメェこの野郎!ビッキーちゃんの前でお前ばっかり良い格好はさせねぇぞぉ!」
色々と考えて気づいた時には、既に後ろの集団が追いつきそうな距離まで迫ってきていた。
「あれこれ考えてる時間はなさそうだな…仕方ない!」
パクッ!
とにかくどれでもいいやと言わんばかりに、目の前にあったひとつのあんパンに噛みついた。
・
・
・
「ぷぎゃああああ!!」
前方から聞こえてきた男の叫び声。
「リッキー!?」
「おい、何だ今の声!」
「わかんない!とにかく行ってみましょう!」
後方集団の先頭にいたジムとサラは、リッキーの元へ足を急がせた。
見えてきた彼の姿。
グッタリと地面に倒れ込んでしまっている。
「リッキー、大丈夫!?」
「おい!しっかりしろ!」
慌てて駆けつけたふたりは、しゃがんで声をかけるが返事はない。
どうやら気を失っているみたいだ。
リッキーの口からは、何やら緑色のネトネトしたものが垂れている。
「なんだ、この緑の…」
「ジム!あれ見て!」
サラに言われて目をやると、そこには彼が咥えていたであろうパンが落ちていた。
そしてそのパンには彼がかじった歯形部分から、同じ緑色の何かが出ている。
明らかに美味しいパンの中に入っていて良い食べ物の色ではない。
「ねぇ、これって…わさびじゃない?」
「わさび!?わさびってあの…お寿司とかに入ってる?」
「そうよ。匂いを嗅いでみて」
ジムは恐る恐る顔を近づけてみると、確かにその緑色はわさび独特のつんとした香りがする。
「本当だ、これはわさびだ!」
「どういう事なの?なんでこんな物が…」
…ドサッ!
すると次は、ジムの隣にいたナイジェルが突然パタリと倒れた。
「ナイジェルッ!?」
彼のかじったパンからは、茶色の泥が流れている。
「こっちも変なものが入ってるわよ!?」
「おいおい。どういう事だ、こりゃ…」
実況者「おっと説明をしていませんでしたが、普通のパン食い競争じゃ全然面白くないので、少々ルールを変更しております!
パンは全部で30個用意しました!
その中であんこ入りの美味しいパンはたったの6つ!
いち早くゴールするには、そのあんこ入りのパンを誰よりも早く見つける事が重要になります!
ちなみに残り24個のパンはダミーとなっており、中にとんでもないものが入っているのでご注意ください」
「初めから言えッ!」
長ったらしく説明を行ったアナウンサーに、珍しくジムとサラは同時に突っ込みを入れた。
「はぁ。おい、どうすればいいんだ。俺、泥入りのパンは食べたくないぞ」
「私だってわさび入りのパンなんて食べたくないわよ」
「大丈夫★そういう時は…!」
そこでジムの後ろからウサギのようにビッキーが飛び出し、パクリとひとつのパンを咥えた。
「自分を信じッ…」
ドサッ(生ゴミ)
パンを咥えたまま漫画のように真っ直ぐ前に倒れたビッキー。
「やっぱり全員が自滅するのを待つか?」
「皆の信頼するリーダーがとんでもない事口走ったわね。あ!そうだ良い事思いついた!」
そこでサラの頭上に「!」が現れる。
「なんだ!?良い事って」
「中身が出ないようにパンを優しく咥えればいいのよ!それなら中身が何だろうと関係ないしね!」
そこで続けてジムの頭上にも「!」が現れる。
「お!さすがサラ!その作戦ならいけるぞ!」
そこでジムが優しくひとつのパンを咥えた途端…
バタン!
彼もまた、清々しく地面に倒れ込んだ。
「……ダメッ…だ……なんか…皮がメッチャ薄くてッ…中身が…染み出てくるッ…(虫)」
無表情のまま、サラは倒れている仲間達を見て固まってしまった。
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