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「…猿?」


そこにいたのは、一匹の小柄なチンパンジーだった。

ご丁寧に少年のような洋服を着ている。


「あれ?このお猿さん、どこかで見た事あるよ。どこだっけ?」

ビッキーは四つん這いのまま、そのチンパンジーをよく見る。


「知らないのかい、ビッキーちゃん!この猿は『天才!木村動物園』に出てくる天才チンパンジーの『Ban君』だよ」

「あっ!本当だ!」


ボビーの言葉で、彼女の頭上に光った電球が現れた。


「でも、どうしてこんな所に?」

「その子の手、見てみなさいよ」

「え?」


サラの言葉で手元を見てみると、彼の右手にはしっかりと何かが大事そうに握り締められていた。

見慣れた白い色の光沢。

リッキーの携帯電話だ。


「あ。この子、もしかして…」

「そうよ。この子はきっと、これを貴方に返す為に追いかけて来たんじゃないの?」


サラがBan君と同じ目線にしゃがみ込んで、その携帯電話を受け取った。


「ありがとう」

彼女がニコリと笑ってお礼を言うと、彼は恥ずかしそうに顔を隠す仕草をする。

テレビと同じだ。


携帯電話が取り戻せたので一件落着。

この建物にもいる必要はない。



「さ、帰るわよ。そこのオカマ。この腰を抜かしてる問題児を担ぎなさい」

「オカマじゃねーよ」

「その格好は誰が見てもオカマでしょ」


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