20
「…猿?」
そこにいたのは、一匹の小柄なチンパンジーだった。
ご丁寧に少年のような洋服を着ている。
「あれ?このお猿さん、どこかで見た事あるよ。どこだっけ?」
ビッキーは四つん這いのまま、そのチンパンジーをよく見る。
「知らないのかい、ビッキーちゃん!この猿は『天才!木村動物園』に出てくる天才チンパンジーの『Ban君』だよ」
「あっ!本当だ!」
ボビーの言葉で、彼女の頭上に光った電球が現れた。
「でも、どうしてこんな所に?」
「その子の手、見てみなさいよ」
「え?」
サラの言葉で手元を見てみると、彼の右手にはしっかりと何かが大事そうに握り締められていた。
見慣れた白い色の光沢。
リッキーの携帯電話だ。
「あ。この子、もしかして…」
「そうよ。この子はきっと、これを貴方に返す為に追いかけて来たんじゃないの?」
サラがBan君と同じ目線にしゃがみ込んで、その携帯電話を受け取った。
「ありがとう」
彼女がニコリと笑ってお礼を言うと、彼は恥ずかしそうに顔を隠す仕草をする。
テレビと同じだ。
携帯電話が取り戻せたので一件落着。
この建物にもいる必要はない。
「さ、帰るわよ。そこのオカマ。この腰を抜かしてる問題児を担ぎなさい」
「オカマじゃねーよ」
「その格好は誰が見てもオカマでしょ」
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