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「キャッ!」


ボビーの声により、間一髪で背後からの攻撃をかわしたサラ。

床には鉄パイプで激しく叩きつけられた跡が残っていた。


「うわ、ビックリした。まだ残ってたの?」

「なにぃ?反応ちょっと薄いんじゃないの?お姉さん」


そこに立っていたのは、鉄パイプをクルクルと振り回している柄の悪そうな金髪の警備員。

先程これで強引にドアを開けようとした男だ。


「怪しいと思って部屋に入らなくて正解だったぜぇー。中が凄い事になってるみたいだけど。何?ゴジラでも入ってたの?」

「ははっ!まさかぁ」


警備員の質問にサラとボビーは、ニヤリと顔を見合わせた。

実はね…



……………







ここはたくさんの警備員が「アレ」の餌食になった暗いアフレコ現場。

扉の前で全員が白目になって重なるように倒れている。

その部屋の大きなスクリーンに映っていたのは…








……………




「この人のドアップ映像よ」




サラはニコニコしながら、ボビーの顔を指さした。


「……ッ…」


さすがの金髪警備員も、汗をダラリと流しながら「ハハッ、そりゃおっかねぇ」と苦笑い。


「ふぅ…それにしても、お前ら一体何者なんだ?見たところビルを荒らしに来た奴にも、物取りにも見えねぇ」

「違うさ☆僕達は泥棒は泥棒でも恋泥棒さ!色んな意味で」

「ますます怪しい奴らだな…」


警備員は疑いの目でふたりの姿をもう一度よく見てみる。

女ひとりに…変態か。

楽勝だな。

そっちの全身タイツはさっさとぶっ倒して、女の方はこちらで楽しませてもらうか。


「勝手に建物に入った事は謝るわ。でも…」

「関係ねーよ!!」

「……ッ」


豹変した彼に後退りするサラとボビー。

警備員の瞳孔は開ききっており「ヒッヒッヒッ」と不気味な笑い方をしながらこちらへ歩いてきた。

「警備員がこんな凶器持ってるって…上のモンにバレたらどーなると思うか?とりあえず、お前らにはどんな手を使ってでも悪者になってもらわないと困るんだよ!」


格好と言動が噛み合わない、その姿がもはや悪人そのもの。

彼は持っている鉄パイプを振り回しながらふたりに襲いかかってきた!


「あ…!」

「ボビー、さがって!」

彼女から胸を押されて後ろに退いたボビー。


「サラちゃん!」

次の瞬間、一瞬にして彼女の目つきが変わった。


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