彼はカッコいいと思います
『出逢いとは何かしらの“縁”があり、自分には直接的な繋がりが有無に関係なくとも…友人、家族、師や物に手繰り寄せられるのさ…』
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飛水から「古文があるから出たほうがいいよ」と言われて、今朝は8時には起床した。
あと、口のうるさいオカン(※ルイです)から「明日、生徒指導室に来るように」言われてたがサボる。
時夜は『不良』とレッテルを貼られているが成績面は非常に優秀であり、来季高校では星華を抜いてほとんど1位。
素行の悪さは文句が言えるが成績面では非のうち所の無い時夜に教職員はあまり言えない中、生徒指導員であるルイ(本当は同い年)だけが怒っている。
そんな時夜にも苦手な分野があり、「古文」・「国語」があまりよくわからないのだ。
理由は時夜が帰国子女で長い海外生活で日本語をあまり必要としない日々を送っていたから。
喋ることは問題無いが漢字を読み書きや古文の読みは教わらない限りわからないようだ。
そんな彼は「古文」だけを学ぶために高校へと歩いて向かっている。
高校へ向かう道の途中、裏路地が何やら騒がしく感じた。
「離してください…!!」
「お姉さーん、嫌がる顔も可愛いね〜」
「ちょっとだけ、俺達と踊るだけだよ」
聞いているだけ気持ち悪いなと思う声と嫌がる女性の声の会話は五感が鋭い時夜にとってはヘッドフォンをしてもわかる。
スマホを確認すると授業開始五分前、時夜なら十分な間に合うが…
「嫌ぁ…助けてぇ…!!」
「来ねぇーよ、バーカー!!こんな道に「通行止めすんな、邪魔だ」ゲハァ!?」
時夜が柄の悪い男を殴り飛ばすとそこには白いタイトスカートと群青色のシャツを着こなす水色のゆるくパーマのかかった長い髪をシュシュで纏めた小柄な女性が居た。
「て…テメェ、“銀髪の悪魔 星川時夜”!!なんでこんな所にぃ…!!」
「“邪魔”って聞こえないのかよ…あと、うるせぇから黙れ」
理不尽に相手を蹴り飛ばすと跳躍し、ストリートダンサーような華麗な動きで残り不良を片付けた時夜は女性の方を見た。
明らかに怖がっているのが判るが此処に居てはまたあの連中に絡まれる。
「………………離れるぞ」
「えっ……あの…」
血があまりついていない手で散らばった荷物を纏め、彼女を裏路地から抜け出したあとになるべく安全な道まで連れ出す。
「此処を真っ直ぐ行くと交番がある…じゃあな」
何か言いたげだったがこれ以上は関わりたくない。
あと、遅刻は確実でまたルイにどやされる。
時夜は珍しく駆け足で来季高校へ向かう姿を見つめる女性は頬が紅くなっていた。
「………………格好いい////」
そう呟くと女性の足にはあるモノが…それは来季高校に通う学生が持つ学生証を時夜は落としていたのだ。
「届けないとあの男の子困るよね…?」
淡い期待をしながら交番に向かうのだった、彼に届ける為に…お礼を言う為に。
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あのあと、社長出勤した時夜は四時限目の古文には間に合った。
今日は土曜日で四時限しかない為に生徒は帰り支度をする者や遊びに行く者とそれぞれだ。
そんな中、時夜にそっくりな少年…ではなく少女 剣士飛水が話し掛けて来た。
「時夜、おはようー!!途中で喧嘩に巻き込まれた?」
「………まぁな」
妙な所が鋭い飛水の質問を交わすと慌てている生徒 季月星華が肩を叩き、ある方向を指す。
「時夜君、時夜君!!ルイ先生が呼んでいる!!」
「………知るか、帰る」
「帰らせませんよ、この白髪頭不良!!」
「うぐっ」
軽い痛みが頭を走ると後ろには眼鏡掛けが…
「誰が…眼鏡掛けだ、誰が…!!」
「お前」
「時夜ァァァァァァァァ!!」
「ルイ先生、STOP!!その気持ちはわかるけど押さえてぇぇぇ!!」
「ルイ先生、どうどう!!時夜もあやま…あっ、いないぃぃぃぃ」
荒ぶるルイを静める二人の目を盗み、時夜は帰路につくためにいそいそと校門を抜けようとするが…
「あっ…あの!!」
「…………お前」
時夜が助けた女性が目の前に現れた。
「先ほどはありがとうございました…あと、これを」
「……ああ、これか」
女性は時夜の学生証を渡すと後ろからルイの怒鳴り声が聞こえてきた。
「時夜ァァァァァァァァァァ!!!!今日という今日は許しませんよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
さすがの時夜…温厚で有名なルイ先生を本気にさせる男(笑)
冗談抜きでルイが本気になると時夜もヤバいのでどうしようかと悩んでいたが彼女を見て思いついた。
「ルイセンセー、このお姉さんと図書館デートするから説教ナシね(棒読み)」
「えっ……あの……」
「なぁ…!?」
「時夜が女性とデート!?」と聞いて目が点になるルイに放置して時夜は女性を姫抱きすると姿を消した(笑)
来季高校から離れた場所で女性を降ろすとダルそうに首を鳴らした。
「ここなら…口の煩いオカン(ルイ)いないしな、お前の名前は?」
「はい…!!私はローラ・リバースです、あの時は本当にありがとうございました!!あの何かお礼を…」
「いい…俺もお姉さんのお陰で助かったから」
時夜はローラの顔を数分見ると考え込んだ。
「お茶に付き合う…それで借りはチャラだ」
「……はい!!」
ローラは嬉しそうに笑うと時夜は名刺を出した、自分でもわからないが彼女なら出していいと思えてきたからだ。
「名乗るを忘れました…俺は四季探偵事務所所属の探偵 星川時夜と言う者です、お嬢さんがお困りな出来事があった際にはどうぞ…ご連絡を」
時夜はローラの手に名刺をそっと乗せるとお茶会へエスコートしていくのであった。
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「ローラ、どうした…そんなに嬉しそうに笑って」
「お兄ちゃん、聞いて…私、カッコいい男の子とお茶に誘ってもらったの!!」
これを聞いた兄が荒ぶる猛獣となったのは聞くまでも無い。
fin
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