トウヤくんがベルを好きなことなんて、そんなのとっくに知ってる。
それこそ、引っ越してきてからすぐに知ったようなものだ。

「みんなぁ〜、ジュース持ってきたよぉ〜!」
「サンキュー、ベル」
ベルがドアを開けて、部屋に戻ってきた。
ジュースを持ってきたとは言っても、やっぱりお盆はトウヤくんが持っていた。
あたしとチェレンとトウコちゃんとで繰り広げられていたばば抜きは、先程トウコちゃんが「飽きた!」と言い始めたのでやめた。
もう少しであがりだったチェレンは納得いかなさそうに、「全くトウコは…もう少し根気というものを持った方がいいと思うよ?そんなんじゃ…」とかってぶつぶつ言ってるけど、そういうのは全部無視に限る。

ギンギンに冷えたオレンジジュースを、ごくっと一気に飲み干す。
トウコちゃんに「やだあリサ、喉渇いてたのぉ?」ってからかわれたけど気にしない。…喉、渇いてたのかなあ。よく分かんないや。
その後でトウヤくんに「おいリサ、あんま一気に飲んで腹壊すなよー」と言われた時には、頬が真っ赤になってしまった。

初めてみんなと会った日のことを思い出す。
あたしはとりあえず荷物を家に運んでから近所の子達に挨拶に行きなさい、とママに言われてそうすることにした。
大体の自分で運べる荷物はもう整理しおわり、一旦家に入って手を洗おうと思った時だった。
あたしは家の前で石っころにつまずき、大胆に転んでしまった。
「いっ…たぁ…」
膝から血が出てきていた。
「う…」
ちょっと痛かったけど、大した傷じゃないだろうと思い立ち上がろうとした。すると、
「……よ!早く…よ!」
家の近くの茂みから声が聞こえたと思ったら、なんとびっくり。その茂みからあたしと同い年ぐらいの男の子と女の子がふたりずつ飛び出してきた。
(茂みから人が出てくるなんて…)
あたしが言葉も発せないほど驚いていると。
「オイ、押すな、って!わ!ちょっとトウコ!!」
まず、当時はあたしより身長の低かったトウヤくんがぎこちない動きであたしの前にやってきた。
「あ!あの…さ。お前、今日引っ越してきたんだろ?」
唐突に質問され、あたしはどう答えたらいいのか分からなかった。
「え…」
するとさっきこの男の子に早く行きなさいよと命令していたらしき女の子が説明してくれた。
「みんなで噂してたのよ、近々あたし達と同い年ぐらいの子が引っ越してくるらしい、って」
あ、成る程、と思い、あたしは軽く自己紹介をした。
「あたしベル!よろしくね!」
あたしの自己紹介が終わって、真っ先に片手を差し出してくれたのはベルだった。
あたしも「よろしくね」と言って、ベルと握手をした。
それから眼鏡をかけた賢そうな男の子が、あたしの怪我にいち早く気づいてくれた。
「…ボクはチェレン。…ところで、その傷、大丈夫?」
「え?」
あたしはトウヤくん達に会えたものだから安心したのか、転んで怪我していたことをすっかり忘れていた。
思い出した途端、またヒリヒリとした痛みが膝を襲った。
「…大丈夫じゃ、ないかも」
あたしが思わず屈み込んでしまうと、トウヤくんがぱっとあたしの右手をとった。
「へ、」
「早く手当てしてもらわねーと!」
あたし達が固まって喋っていたのは、あたしの真新しい家のすぐ前であって、つまりそんな短い間だけだったけど、トウヤくんはあたしを、おぶってくれた。
「……!」

あの時のことは、思い出しただけでも笑みがこぼれる。
トウヤくんったら、あたしをおぶったは良いものの自分も転んじゃって…。


トウヤくんは、誰にでも平等に優しい。それはこの長い付き合いにより分かっている。
…だけど、だけどあの時のあたしは。
まだ『トウヤくんが誰にでも優しい』ことを知らなかった。
だから。だから好きになって、しまった。

(君はあの子が好きなのにね、)

ただの幼馴染みだよなんて言い飽きてる

トウヤくん、なんであたしに優しくしたの。



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ウワアアアアァ
タイトルと全く合っていない…だと…!
しかも話進んでないし…!
過去を振り返ってるだけという罠…!
すみませんすみません…
次回は頑張りますorz


20110906





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