わたしは小さい頃、かなりの泣き虫だった。…いや、今でもそれは変わっていないかもしれない。
現にわたしは今、ジムリーダーに負けて悔しくて泣いている。
「…いい加減泣き止んだら」
「…チェレン…」
幼馴染みのチェレンとは別々に旅に出たものの、たまに偶然町で会ったりする。
チェレンは強いから、きっと弱いわたしを馬鹿にするんだろうな。そう思うとまた涙が溢れてきて、とまらなくなる。
「…泣いてたってしょうがないでしょ、次は勝てるように努力したら」
だけど意外にも上から降ってきた言葉は(チェレンにしては)優しいもので。わたしは驚いて顔を上げた。
「…なに」
「ううん、チェレンがそんな優しいこと言うなんて珍しいな、っていたいいたいー!」
本当のことを言っただけなのに、ムスッとした顔でほっぺを捕まれてぐにぐにされた。
うー…ヒリヒリする…
「…あのねぇ名前、そんな泣き虫じゃ一人前のトレーナーになんかなれないよ?」
「だけど…」
わたしが心の中にあるモヤモヤだとか不安感を露にすると、チェレンは怒ったようにはっきり言った。
「そんな後ろ向きな名前、ボク好きじゃない。」
すき、じゃない。
何かがグサッと突き刺さった、ような気がした。
何処にって、もちろん、心。
わたしの悲しそうな顔をチェレンは横目で見て、深い溜め息を吐いてから「君にはボクのライバルになってほしいからだよ」とぶっきらぼうに言った。
その時、チェレンの頬が紅く染まってた気がしたけど。
本当にそうだったかは、一瞬だったから分からないや。
そしてチェレンは立ち上がると、去り際にわたしに言った。
「名前は別に弱くないと思うから。あとは戦い方次第だよ、まあ頑張れ」
がんばれ。
チェレンはそんなことを女の子(つまりわたし)に言うようなキャラだったろうか…。
ふと考えると、チェレンは思っていることを素直に言えない人なんだっけ、と思い出した。
素直じゃないね