初めて会った時から、掴みどころのない人だとは思っていた。
黄緑の、柔らかそうな髪の毛を持ち、端正な顔立ちの彼。
しかも強い。
なんとか勝てたけど、私もギリギリのところだった。
彼は、全てを見通したような目をしている。その目が苦手なんだと、私は今自覚した。その目で見つめられると、思わず逸らしたくなる。その場から逃げたくなるのだ。
―私は今何故、苦手な彼とふたりきりで観覧車などという密室にいるのだろうか…
半ば無理矢理乗せられた、と言っても過言ではない。
私はプラズマ団を捜していただけなのに。
何を話せば良いんだ、とか思って拳を膝の上で握りしめ俯いていたら。
「ボクがプラズマ団の王様。」
……私はフリーズしてしまった。
顔を上げてNを見ると不敵な微笑みを浮かべて私を見ていて。
その目に焦って顔ごと横に向き、外の景色を見るようにすると。
「どう思う?ねぇ。ボクがあのプラズマ団の王様なんだよ」
顔をNの両手で挟まれてNの方を向かされた。
は、何。意味分かんない…
彼がプラズマ団の王様だとかそれもだけど、何この手。セクハラですかだってNは正確な年すら分からないけど容姿からしてきっと17歳くらい?
私年下なんですけど何ロリコン?
嘘そう見えないんだけどてかやめてその目ほんと…
怖い怖い怖い怖い…
私の目はだんだん涙を溜めていたらしく、それに気付いたNが指で零れ落ちる涙を拭ってくれた。
「…知ら、ないし」
私はNの指が思ったより温かいことに違和感を感じてコイツは悪者なんだ、と自己暗示するように続けた。
「いきな、りそんなこと言われても、あんたがプラズマ団の王なら私はあんたの敵なのに。なんで言ったの意味分かんない」
「…君となら、なんだか大きなことが出来そうな気がしてね。
…っていうか、ボクは今すごく君に…」
―――
「ありがとうございましたー」
係員のお兄さんが私達を観覧車から下ろしてくれる。
周りから見たら私達はどんな関係に見えるのだろうか。
兄妹?恋人?友人?
「じゃあ、またね。またバトルしようね、ボクももっと強くなるよ」
Nはそう言い残すと何も残さず去っていった。
私は遊園地のベンチでうずくまり、今も耳に残るあの人のハスキーボイスを思い出すことしか出来なかった。
「君に、惹かれている」
私はあの人が苦手だし、あの人は敵だ。
なのに、苦手と嫌いは違うんだ。