※レッドさん死んでます
ねえグリーン、私しあわせになりたいな。
そう呟いた名前の横顔はとても綺麗で、思わず見惚れてしまった。そんな俺に気づいたのか名前はふっと顔をこちらに向けると、再び同じ言葉を吐いた。
「グリーン、私しあわせになりたい」
名前の大きくて澄んだ瞳と俺のそれから放たれる視線が空中で交わり、俺は何も言えなくなってしまった。幸せになりたい、ってなんだ。昔から名前はミュウを捕まえに行くだとか小説家になってやるだとか俺にとっては意味の分からない事を突然言い出したりやり出す人間だったけれど。「なりたい」という事は今はそうではない、幸せではないという事なのかとふと疑問に思い問い掛ける。
「うん、今はしあわせじゃない」
じゃあお前にとっての幸せって何なんだ?
今度はそう問うと苦笑しながら「わかんない」と言われた。時折思うのだが、名前は少し子供っぽいと思う。今だっていきなり訳の分からない事を言い出したし、しかも自分でもよく分かっていないときた。こんな時どう対処したらいいかについての知識を俺は持ち合わせていない、俺はレッドとは違う。だから今まではただ笑ってやり過ごしてきたが、今回は訳が違う。名前の願いが「幸せになりたい」ときた。簡略すれば俺といても幸せじゃないのだ、名前は。
そうだ、やっぱり名前はレッドといた方が幸せなのかもしれない。心の奥では分かっていた筈なのに。どうしたって名前には、レッドが必要だって事。
「グリーンは?」かつての友を思い出し、物思いにふけているところにいきなり質問を投げ掛けけられ、今は名前と話していたのだと我にかえる。
「え?あ、ああ」
「グリーンは、今しあわせ?」
名前は真っすぐこちらを見つめている。こんなに、こんなに俺を見てくれているのに、今名前は幸せじゃないんだ。
「ああ、幸せだよ」
そう。断言出来る、俺は今十分幸せだ。トキワのジムリーダーで、隣に名前がいて。
「…ふぅん、そう」
俺の言葉に名前はつまらなさそうに頷くとだらんとうなだれてしまった。
ああ、分かってる。分かっているよ、本当は俺も名前と同じ、幸せじゃないんだ。断言だなんて、虚しいな。あいつがいないから。名前もそうだろ?あいつがいないから、幸せになりたいなんて思うんだろ?
「…何で、俺に言うんだよ…」
俺に言ったってあいつは戻って来ない、どう足掻いたって。けど俺達は前に進むしかないんだよ、お願いだからいつまでも止まらないでくれ。無理して進んでる俺が、馬鹿みたいだろ。
きっと、名前には届かない。
僕が欲しかったもの
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主人公病んでますね…なんか最初に思い描いてた話と随分違くなっちゃいました←よくある事