昔から、自分でいうのはなんだが運動神経は良かったし、ホウエンをぐるりと一周した訳だから体力もある方だと思う。
けれど、私だって女の子だ。かわいいものとか大好きだし、それなりに好きな人だって、いる。
それはミツルくん。ミツルくんとは、私がまだ旅を出て間もない頃にトウカという町で出会った。
病弱だけど強い意思を持った男の子で、私は一目見た瞬間好きになった。
でも残念ながら、私はミツルくんに恋愛対象に見られてないみたい。
そう思ったのは、今日言われた、あの言葉が原因。
「名前ちゃんって男の子っぽいよね」
そりゃあ冒頭でも言ったように、私は女の子の中じゃ並以上の体力の持ち主なのかもしれないし、それとは対照的にミツルくんが病弱ってこともある。
けどだからといって、それが私が男の子っぽいという理由になるのだろうか。
いくら言った張本人が好きな人だからといえ、若干の怒りが募った。だって男の子っぽいって言われて喜ぶ女の子なんて、いないもの。
「でも…」
私はミツルくんがなにか言いかけたことなんて尻目に、それ以上自分が男の子っぽいだとか言われるのが嫌で、怖くて、だから無我夢中でその場を走り去った。
そして現在に至る。ここはトウカの森付近。野生のポケモンが多く生息してるから、初めてここを抜けた時は私のポケモン達がみんな倒れちゃって大変だったっけ、と思い出す。そうだ、私は今までこの壮大なホウエンをたったひとりで旅してきた。そんな女の子、女の子として見れなくて当然なのかもしれない。
そう考えるとミツルくんの言ったことは正しい気がして、逃げて来てしまったことを後悔する。謝りに行こう、そう決心して来た道を引き返す。するとすぐ後ろにはいつの間にかミツルくんが、いて。
体が弱いのに無理して走って来たのか、息が荒く、肩も忙しく上下に動いている。
「…ミツル、くん…?」
心配だったので声をかけると、彼はすぐさま反応して、私と目が合った。
ごめんね。謝ろうと口を開けば先に言葉を紡がれた。
「さっきは…ごめんなさい、僕、名前ちゃんの、気持ちも、考え、ないで」
所々息が切れていて聞き取りづらい部分もあったが、彼から謝ってくれたことは分かった。
「私こそ…ごめんね」
私からも謝ると、ミツルくんは安心したように肩の力を抜いて、それから続けた。
「良かった、ありがとう、僕、名前ちゃんに嫌われたら…って、思って」
右手が何やらあたたかいものに包まれたかと思うと、ミツルくんの左手だった。ミツルくんに手を握られてる。
「ミ、ツルくん…?」
ミツルくんが微笑んだ。それにつられて、私も笑ってしまう。
「さっき言い損ねたんだけどね、僕、男の子っぽい女の子、好きだよ」

これは両想いと受け取ってもいいのでしょうか。


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