「先輩!」
「なに」
無言で雑誌を読んでいた先輩に、私が読んでいた雑誌を突き付ける。それの表紙には今流行りのお洒落な服を着た女の人がでかでかと掲載されている。
だけど先輩に見てもらいたいのは巻末の占い特集であって、そんな女の人達ではない。まあレッド先輩にいくら綺麗な女の人を紹介したって、彼がドキドキするなんてことはかなりの確率でないと思うけど。それでもやっぱり、私は先輩に片想いしている身だから、他の女の人なんて一瞬たりとも見てほしくはない。
「…これがなに」
「なに、じゃないですよ先輩!占いですよ今話題の!占い目当てにこの雑誌買う人も少なくないんです、それくらいよく当たるんですよ!」
「ふーん」
レッド先輩は興味なさそうに返事をすると再び雑誌を読みはじめた。
「ふーんって…」
まあ大方こうなるだろうと分かってはいたけど、やっぱり残念だ。せっかくこの占いでレッド先輩と私の相性が良かったから、それを伝えて少しでも意識してもらおうと思ったのに…
そんなことを思っていると、ボールから出て先輩の隣にいたピカチュウがちゃあ、と鳴いた。お腹がすいているのかな?そう思って雑誌をその場に置いてから自分のバッグに入っている木の実を取りに行こうと立ち上がる、すると後ろから腕を引っ張られた。
「う、わ!」
突然のことに驚き、なんとも間抜けな声が出てしまった。レッド先輩の前なのに、恥ずかしい…。
「なん、ですか?」
後ろを振り向くと私の右腕を掴んだまま雑誌を読んでいるレッド先輩が。その隣ではやっぱりお腹がすいていそうなピカチュウ。
「これ、ほんとに当たるの?」
先輩は自分の雑誌をピカチュウの方にぱさりと置くと、私が読んでいた例の雑誌を片手でパラパラとめくりはじめた。ピカチュウは自分の方に置かれた雑誌をなんだこれというような目で見ている、ペットは飼い主に似るってよく言うよね…。
「えと、はい。それで、あの…」
私は未だレッド先輩に捕まれたままの右腕に視線を落とす。やっぱり本人に直接自分との相性がいいことを伝えるなんて照れ臭い、な。
「ふーん。………」
先輩はそれだけ言うとまた雑誌をパラパラとめくって占い特集を読みはじめた。う、占い見てるよあのレッド先輩が…。
というか早く木の実を持って来てあげないといい加減ひとり(一匹?)で遊んでるピカチュウがかわいそうになってくる。けれど私の右腕はまだレッド先輩の強い握力に縛られたままなので、ここから少し離れた場所に置いてあるバッグまで歩くことは出来ない。
(うー…先輩早く読み終わらないかなあ…)
そう思い始めてから数分後。レッド先輩は読み終えたのか雑誌から目を離した。
そして代わりに視界にうつったのは私。レッド先輩の綺麗な瞳に、私の顔がうつっているのがよく見えた。
「あ、読み終わりましたか?」
右腕もだんだんと血が止まってきているのか痛くなってきた。
「…名前」
「はい?」

オレとお前、相性抜群らしいよ。

「わあ本当ですか!!」
知っていたけど、初めて知ったかのような反応をしておいた。一応、ね。
「水と電気のように」
「…どういう例えですかそれ」
「はは、」
珍しく笑った先輩の頬が、少し朱く染まっていたのは内緒にしておこう。



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レッドさんのキャラが分かりません
未だにお腹がすいているピカチュウがかわいそうです


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