おかしい。ユウキくんの様子が、今朝からずっと変だ。なんでだろう。
ずっと苛々してるというか…とにかく、変だ。
私とユウキくんは今日、ポケモンバトルをする約束をしていた。
なのにユウキくんがなかなか誘ってこないので、ちょっと怖かったけど私からバトルしなくていいの?と聞いたら、「うるさいなぁ、ほっとけよ」と怪訝そうに追い払われた。
今までバトルの約束をしてドタキャンされるなんてことは絶対なかったのに。
どうして。私、何かした?
普段あまり使いもしない頭を精一杯回転させて考えてみるけど、特に思い当たる節はなかった。
だとしたら…私以外の誰かと喧嘩したとか、何かされたとか?
う〜んう〜んと唸っていると、そこへハルカちゃんがやって来た。
「名前!どうしたの?すごく困ってそうな顔してた、けど」
私そんな困ってる顔してた!?とちょっと羞恥心に煽られたけど、私は事のいきさつをハルカちゃんに話した。
「ユウキが機嫌悪い?」
「うん…バトルの約束も断られちゃって」
「うわーそれってかなりキちゃってるわね…」
やっぱり…。ハルカちゃん曰く、ユウキくんがバトルをしないなんて、相当怒っている時でもない限り有り得ないらしい。
やっぱり私が何かしたんだ、と俯く。
だけど原因が分からないことにはどうやって謝ったらいいのかも分からない。
そこでハルカちゃんに尋ねれば、
「あ、もしかしてあれじゃない?」
即答だった。
「あれ?」
私がどんなに考えても分からなかったユウキくんが機嫌の悪い原因。
一体なんなんだろう…。
「うん、絶対そうよ!昨日名前がダイゴさんに会いに行ったから!」
ハルカちゃんははっきりと、そう言い切った。
だけど私には訳が分からなかった。
「え…ちょっと待って、なんで私がダイゴさんに会いに行ったことを怒るの」
「嫉妬でしょ」
またもや即答だった。しっ、と…!?
嫉妬というのはアレですよね、好きな人が違う子と話したりすることにより生じる感情で…
ん?
すきな、ひと?
えーと。ユウキくんが嫉妬したのは私がダイゴさんに会いに行ったからで…ってことは私がユウキくんの…
「何してんだよ」
ハルカちゃんがニマニマ笑い、私が軽く頬を朱くさせながら考え事をしていると、今朝あんなにも機嫌が悪かったユウキくんが普通に話しかけてきた。
「わっ!ユ、ユウキく…」
「んな驚くなよバカ」
あ、あれ?いつものユウキくんだ。どうしたのかな、もう機嫌直ったのかな?よし、ここは本人に直接聞いてみよう。
「ユウキくん、」
「んー?」
「なんで今朝、機嫌悪かったの」
今のは確実に、私が軽く聞いてしまったのが悪かった。
ユウキくんが私をギロッと睨んでくる。私は怖くて思わず顔を背ける。
ユウキくんは続けた。
「…お前が、ダイゴさんとこ行くからだろ」
へ?
それ、って、さっきハルカちゃんが言ったことと同じだなあ、なんてボーっとしていると、突然両手を握られた。
「お前はオレのそばにいればいいんだよ」
ユウキくんが真面目な顔で、しかも少し赤面しながら言うものだから、私は何も言えず立ち尽くしていると、「返事は?」と促されたので、反射的に返事をしてしまった。
「は、はい!!」
「ん、いい子」
するとユウキくんは優しく笑いながら私の頭を撫でてくれた。
なんだろ、私今、すごく幸せ。
つまりはきみがすきだから
(だから嫉妬すんの。)
*おまけ
(「ちょっとー、お二人さーん、私がいること忘れてますけどー?」)
(ハッ!ハルカちゃん…)
(雰囲気ぶち壊すなバカ)
(なんですってー!?)
(や、やめなよ二人ともぉ…)