意識し始めたのは一ヶ月前で、プレゼントを買ったのは二週間前。何を言おうか考えたのは一週間前で、昨日はシチュエーションを考えた。
私はポケギアを片手に持ったまま、枕元にある目覚まし時計を穴が開くほど見つめる。秒針が一周すると、短針は少しだけ前に進む。いつもは気にしない普通のことでも、この日だけは特別なのだ。
あ、あと、5秒。
「4、3、にい、いち…」
ゼロ。私はポケギアの通話ボタンを押した。
「誕生日おめでとう、シルバー!」
「………」
ポケギアで電話をして取り付けた約束、12時にクリスマスツリーの下。一秒の遅れもなく、きっかり12時にシルバーは現れた。
「…用事とはそれだけか」
またまたあ、照れちゃって。いくらごまかしたって私は騙せないんだからね、本当は喜んでくれてることなんてお見通しだもの。
だから私が何も言わないでいると、
「下らない、俺は帰る」
本当に帰ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
必死でシルバーの服の袖を掴んで、止める。
有り得ない。こんなの予想外だ。彼はいっつも、私の計画通りに行動してくれないのだ。少しは女の子の気持ち、考えてよ。
「…なんだ?」
まだ何かあるのか、とでも言いたげにシルバーは振り返った。
「なんで待ち合わせ、12時にしたか分かる!?」
「そんなもの知るか」
「…っ、折角シルバーの誕生日なんだから、一日の半分は私と居てほしかったの!」
周りの視線なんか考えない、クリスマスツリーの下、私は思いっきり叫んだ。
一年に一度の誕生日。シルバーは、好きな人と過ごしたいって思わないのかな。
「………」
シルバーは一瞬呆れたような表情を見せたかと思うと、ふいに衿を引っ張られた。その作用で、私の体は一瞬でシルバーへと引き寄せられた。
「うわっ!」
なんて女の子らしくない声が出てしまったのだろう、と後悔するがもう遅い、見上げればすぐそこにシルバーの顔。なんというか、すごく、近い。
黙って見つめていれば、シルバーと私の視線が空中で交わった。その瞬間、私とシルバーの唇も重なった。
これも、予想外。
ためらうことなくキスをしてtitle by
リボン-------------
シルバー誕生日おめでとう!