第1話 森と犬。






犬に出会った。
それもとんでもなく大きくて、最初見た時には狼か熊と錯覚してしまうほどの真っ黒い犬だ。
私はただなんとなくぶらぶらと校庭を歩いていただけだったが、その犬を見た瞬間思わず腰を抜かしてしまった。勿論、狼だと思ったのだ。禁じられた森には狼男がいると聞いていたし、完全に狼男だと思った。しかし今は昼間。そんなことはあり得ないと一旦自分を落ち着かせ、もう一度目を凝らしてみるとそれがただの大きい犬だということに気が付いた。

犬は禁じられた森と校庭の芝生のちょうど際、木々の影になっているよく目を凝らさなければ気が付かないような場所に大人しくお座りしており、こちらをじっと見つめている。

「おいで。」

しゃがんで手を差し出すとその犬はキョロキョロと辺りを見回した後、「嫌だ」とでも言いたげに少しだけ後退りをした。かわいい。
私は動物好き本能の求めるがままにその犬に近付いた。森の際まで近付き、その場にまたしゃがみこむ。近くで改めて見てみると、その犬を遠くで見た時に想像していた大きさを遥かに上回る大きさだった。しゃがんだ私とほとんど背丈が変わらない。

「この森に住んでるの?」

そっと頬をなぜると、犬は気持ち良さそうに目を細めた。触ってみて気が付いたのだが、この犬は見た目に反してかなり痩せているらしい。しかもだいぶ汚れている。

「あなた、細いね。」

優しくなぜながら、呟いた。
先程から答えるわけもないのに何故か話し掛けてしまう自分になんだか笑えてくる。端から見ればただの変人だろう。しかし不思議なことに、この犬は私の言葉を理解しているんではないかという感覚にとらわれていた。なんせホグワーツに住み着いているくらいだ、何かしらの魔力を持った犬かもしれない。

「お腹空いてない?」

「クゥーン」と、初めて犬が答えた。驚いてその犬の顔を凝視すれば、犬は何かを訴えるような目で私を見ている…気がした。やはりこの犬は私の言葉を理解しているんだ。そう確信した私は勢い良く立ち上がった。

「今日、夕飯をこっそり持って行くわ!」



こうして私と犬との奇妙な交友が始まったのだった。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -