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(名前変換無し)



わお、トム・リドルが寝ている。
湖の近くでぶらぶら散歩していた私はまさかの人物に思わず足を止めて近付いた。あまり話したことは無かったが、周りの女の子が騒ぐのも頷ける程の綺麗な顔で湖の畔りの木の幹に寄りかかるようにして穏やかに寝息を立てていた。
お人形さんみたいだなぁと思いつつ、私はふざけてその前髪にふーっと息を吹きかけた。すると眉間に皺を寄せて僅かに睫毛が震えたが、すぐにまた穏やかな顔に戻って尚も眠り続けている。
もう一度息を吹きかけて彼を起こそうとした時、彼の側に小さな手帳が置かれていることに気が付いた。黒い表紙の薄い手帳だ。なんだこれ、と手に取ってページの一番最初を捲ると、どうやら日記帳のようだった。
私はちらりと彼を見遣った。まだ寝ている。こんな堅苦しそうな彼がまさか日記をつけているなんて。

(その真面目くんの下の正体、見破ったり!)

私は罪悪感以上に好奇心が勝り、ゆっくりと二ページ目を捲った。さてさて何が書いてあるのか。しかしワクワクしながら捲ったわりに、そこにはただ白いページがあるだけだった。なーんだ、つまらない。そう思って表紙を閉じようとした瞬間、白いページに文字が浮かび上がってきた。

「silly girl (おバカさん)」

驚いて日記から顔を上げると、さっきまで寝ていたはずのトムが上半身を起こして私を見ていた。その顔は何故か笑顔で、それが逆に恐ろしく感じる。

「ご、ごめんなさい私、勝手に……」

トムから視線を逸らして日記を彼に返そうとすると、彼は私の手を掴んで力強く地面に押し倒した。目の前には木々の隙間から覗く青い空と、口角を上げて不敵な笑みを浮かべるトム・リドルの綺麗な顔。一体何が起こっているのだろうか。

「人の日記を覗くなんて、ダメじゃないか」

彼は笑いながらそう言うと指で私の輪郭をなぞり、それからその指はゆっくりと私の唇に触れた。

「どうしてやろうか?」

彼の整えられたかのように綺麗な手が私の首にかかる。耳元で低く囁かれた私はくすぐったいのと恥ずかしいのと怖いのとで、背中が一気に粟立つのを感じた。


なぞる トム



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