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(名前変換無し)




「キスってどんな感じなんだ?」

談話室で隣に座るドラコ・マルフォイが急に真剣な顔をしてそんなとんでもないことを言うものだから、私は手にしていた百味ビーンズを盛大に床へとこぼした。

「おい、何してるんだみっともない。」
「あ、あなたが変なこと言うからでしょうが!」

動揺しながらも床に散らばったカラフルな百味ビーンズを拾い集める。そして分かりきってはいたが、勿論彼は拾うのを手伝わない。ちらりと彼を見れば、高みの見物でもするかのように長い足を組んで私のことをソファーから見下ろしていた。

「で、どうなんだ?」
「……そんなに気になるならしてみればいいじゃない、クラッブかゴイルと。」

面倒くさそうに答える私に、ドラコは真顔で「お前はバカなのか」と言った。
全く、ジョークの分からない男っていうのはやーね。バカはどっちだ。私はやれやれとわざとらしく溜め息をつくと、「じゃあパンジーとでもしてみたら?」と言いながら床に散らばるビーンズ集めを再開した。

「パンジー?」
「そうそう。パンジーだったらきっと泣いて喜ぶと思うけど。唇が腫れ上がるくらい毎日キスしてくれるよきっと。良かったね。」

ドラコはうーんと唸りながらすっきりと尖った顎をさすっている。そんなに真剣に悩むことなのだろうか。ドラコはわりとこういうところには無頓着というか、今まで興味が無かっただけなのだろうけど。こんなこと言い始めたのもきっと女たらしのブレーズに変なことを吹き込まれたからだろう。どうせ「お前まだキスもしたことないのか?」とか煽られて対抗しているに違いない。


「……僕はパンジーとじゃなくて、お前としてみたいんだ。」

急にドラコの口からぽつりと溢れた言葉に、私は驚きすぎて顎が外れるのではないかと思った。おいおい、何を抜かすんだこの坊ちゃんは。

「何で急にこんなこと言い始めたのか知らないけどねぇ、そういうことは私以外の……」
「だからお前がいいって言ってるだろう!」

イラついたようにドラコは吐き捨てて、急に私と同じ視線になるようにしゃがみこんだ。それから「これを拾うのを手伝ったら、僕とキスしてくれるのか?」なんて抜かすものだから、私はしばらく時間が止まったかのように目を見開いて固まってしまった。実際10秒間は本当に時間が止まっていたと思う。呆れて言葉が出ない。
その間も真っ直ぐに私の目を見つめるドラコに根負けして「……あーもう、分かった、じゃあ目を瞑ってよ。」と言えば、彼は従うように大人しく目を瞑った。

鼻先と鼻先がくっつく距離まで顔を近付ける。ドラコの鼻息が私の顔に掛かった。緊張からか、目蓋が何度もひくついていた。
それから私は彼にキスーーではなく、思い切り強く、額にデコピンをお見舞いしたのだった。



デコピン ドラコ



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