06 リーマス・ルーピン




暫くの間、談話室のソファーに座りながらリリーが大広間から帰ってくるのを黙って待った。
きっと途中で彼らに出会すだろうから、またいつものようにポッターに絡まれているかもしれない。私は長い息を吐き、ソファーに深く沈み混んだ。

ぼーっと暖炉の中の灰を見つめ、今しがた起きたことを思い返す。
ルーピンは何故あんなことを……私を助けるようなことをしたのだろうか。ルーピンとは勿論話したことがなかったし、四人組の一人程度にしか意識していなかったのだが、さっきの彼の行動のせいでなんだか急に胸がもやもやして気になり始めた。
もしかして彼は良い人なのかもしれない、でもあんな奴らとつるむくらいなんだから良い人なわけがない。そんなことを天使と悪魔が交互に囁き合い、私の脳内をぐるぐると巡っている。
いろんな思考が飛び交いパンクしてしまいそうな頭を抱え俯くと、突然バタンと絵画が閉じる音が聞こえてふと我に返った。視線を談話室の入り口に向ければ、ちょうどリリーが憤慨しながら談話室に入ってくるところだ。

「もうあいつらったら本当に信じられない!」

リリーはわざとらしく地団駄を踏むように私に近付くと、隣に腰を下ろした。彼女を見れば、髪の色と同じくらいに顔が怒りで真っ赤に染まっている。

「ポッターときたら、“やぁ今日も一段と美しいね”だなんて……昨日あんなことをしておいて一体どの面下げてそんなことが言えるのかしら!」

勢いよく捲し立てるリリーに圧倒されながら、いつも以上に饒舌な彼女に私は目を見開き驚いた。ここまで顔を真っ赤にして怒っている彼女を見るのは久しぶりだ。
一通りポッターへの文句を溢したリリーはそれから勢いよく私に振り返り、肩をがっしり掴んでビー玉の様な綺麗な緑色の瞳を私に向けた。真っ直ぐに私に向けられたキラキラ輝くその瞳には、僅かに不安な色が混ざって見える。

「リリー、どうしたの?」

「……ポッターがさっきあなたに会ったって言っていたから、何か言われたんじゃないかと心配していたんだけど……」

心配そうな顔をしているリリーに向かって「確かに色々言われたけど大丈夫だよ」と笑顔で言うと、リリーは安堵の息を洩らした。

「ちょっと泣きそうになったんだけど、ルーピンが途中で止めてくれたんだ。」
「ルーピン?珍しいわね。」

「そうだよね……」と呟きリリーから目をそらすと、もう一度先程考えていたことが頭に巡る。しかし今度はもう悩んで迷うことなどはなかった。私は既に気が付いていたのだ。彼が良い人なのだと。

「ナマエ、また何かされたら必ず言うのよ!」

擦りすぎて少しヒリヒリと痛む目元を押さえながら小さな声で「うん……」と呟くと、リリーは僅かに微笑みポケットから何やら取り出した。

「あとこれ、ナマエ時間割り貰うの忘れてたでしょ。」

そう言って差し出された時間割りを受け取り、目を落とす。それから今日一日の授業を確認すれば、一時間目は「薬草学」と綺麗な文字で記されていた。薬草学ならば温室に移動しなければならない。私達は一時間目の準備をする為にソファーから立ち上がり、寝室へ向かった。




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -