04 不安




それからのことはほとんど覚えていない。
大広間で新入生の組分けやダンブルドアの挨拶があったのだが、全くと言っていい程頭に残ってはいなかった。目の前に広がる豪華な料理にさえも手をつけずにガヤガヤした大広間にただぼーっと座っているだけの時間を過ごし、いつの間にか寮に着いていたのだ。
私は荷物を全て運び込み、ベッドに腰を下ろして項垂れた。

やってしまった、あのシリウス・ブラックに。

ぼんやりとした記憶の中、唯一シリウス・ブラックが頬を押さえ驚いた顔をしながら私を凝視していたことだけは鮮明に覚えている。
あの時のシリウス・ブラックの顔と言ったら、これ以上にないくらいに目を丸くしてまさに「間抜け面」という言葉がぴったりな表情だった。その顔を見たジェームズ・ポッターは大爆笑、リーマス・ルーピンやピーター・ペティグリューでさえも控えめに、気付かれぬように(しかしバレバレである)笑ったもんだから、シリウス・ブラックの顔はみるみるうちに怒りと羞恥で真っ赤に染まり僅かに震えていた。
それから私はリリーの手を引き、振り向きもせずコンパートメントを後にした為その後のことは分からないが、彼が怒っているということは言うまでもないだろう。

深くため息をつくと、リリーがかわいいパジャマ姿でちょうど部屋に入ってきた。シャワーを浴びてきたようだ。
項垂れる私に気が付き、心配そうな顔でそっと声をかける。

「ナマエ、大丈夫?」

「リリー……どうしよう、明日いじめられたら……最悪殺されるかもしれない。私はどうしたら……」

「落ち着いて、大丈夫よ。そんなこと私が許さないんだから。」

いつもの如くネガティブになる私を励ましながらベッドの縁に腰を下ろしたリリーは「それよりも手が腫れてるわ」と手を取った。
言われるまで気が付かなかったのだが、かなりの強さで殴った為か思ったよりも赤くなっている。
リリーはベッドの脇にある棚の中から何やら小瓶を取り、中にある薬を私の手に塗り始めた。

「人を殴ると自分も痛いんだね。私すっかり忘れてた。」

「そうね……。でもあの時のナマエ凄く格好良かったわよ、私もスカッとした。それにあのブラックの顔ったら!」

クスクスと笑いだすリリーにつられて、私もつい笑ってしまう。
リリーは薬を塗り終わると「明日も早いからナマエも早くシャワー浴びて寝ましょう」と言いながら布団に潜った。私は頷き、シャワーを浴びるためにベッドからゆっくりと降りたのだった。




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