47 図書室の攻防戦




私はポッターに対して心底腹を立てていたので、何が何でもポッターとリリーをくっつけてたまるかという気持ちになっていた。
その上スネイプにリリーとポッターが良い雰囲気なのだと誤解されたままなのは何となく癪だったので、毎日図書室にコソコソと通ってはスネイプの姿を探した。しかしそういう時に限ってスネイプは図書室に中々現れず、例え見かけたとしてもあの嫌なお友達も一緒にいるので話しかけられずにいたのだった。そうしてようやくスネイプが1人で図書室にいる所に遭遇出来たのは、10月も終わりかけようとしていた頃だった。


スネイプは、誰が好き好んで座るのだろうかと思われるような端っこの暗い席に座っていた。猫背になって何か本を真剣に読んでいるようで、脂ぎった鬱陶しそうな長い髪がテーブルにつくかつかないかのところで揺れている。

「スネイプ、久しぶり」

スネイプは顔を上げて私の顔を見るなり、読んでいた本を閉じて席から立ち上がった。私はそんな彼の目の前にすぐさま立ちはだかる。こんなことが前にもあった気がする――デジャヴだろうか?スネイプはそんな私をじとっとした目で睨み付けた。

「邪魔だ。どけ」
「……あの、リリーとポッターの事だけど……」

私が2人の名前を出すと、スネイプは分かりやすくぴくりと反応を示した。どうやらそのま聞いてくれそうな雰囲気だったので、私は話を続けた。

「あの2人、私が無理矢理デートさせたの。だからリリーの意思でデートしたわけじゃないと言うか……その、リリーはスネイプにその現場を見られてしまったことに凄くショックを受けていたし……」

上手く伝えられないもどかしさで、私の目は忙しなく泳いだ。こういう時、自分の頭の悪さを心底恨めしく思う。スネイプは何を考えているのか分からないような仄暗い二つの目を私に向けて、黙って私の話を聞いていた。

「スネイプが、マルシベールやエイブリーと仲良くし始めたのが丁度その時期だったから気になって」
「そんなこと、わざわざ言いに来たのか?」

スネイプが、嘲笑うようにそう言った。土気色の顔に僅かに赤みがさしている。私に余計な気を回された事を酷く恥じているように見えた。

「う、うん、だって誤解したままなのは嫌だったし……あなた達はちゃんと話をするべきだよ」
「僕とリリーの問題だ。お前に何が関係あるんだ?」
「……それは」

私は言い淀んだ。このまま言い争い続けていたら、また2人の仲を余計に悪化させてしまうような気がした。その時、背後に人の気配を感じて振り向くと、マルシベールが腕組みをして私の後ろに立っていた。私を見るその目には、隠す気も無い明確な嫌悪感が浮かんでいる。

「兎に角、お前みたいな穢れた血の心配なんて必要ない」
「……なっ!」

スネイプはマルシベールの前で威厳を保つかのように私を侮辱した。後ろに立っていたマルシベールが、それに対して満足そうに笑う。リリーと幼なじみでありながら、まさかスネイプがその言葉を使うなんて。

「……別に私の事はいくらでも好きなように言っても構わないよ。でもリリーに対してそんな事言ったら――」
「ワーオ、勇敢だね。言ったら、何なんだい?」

マルシベールが口を挟んだ。うるさい、私は今スネイプと話してるんだ。

「そんな事言ったら――許さないから」

私はスネイプを睨み付けた。スネイプは苦々しい顔で私を見ている。マルシベールは「許さないだとさ!」と馬鹿にするようにゲラゲラと笑った。
どうやら私達のこの会話は思ったよりも大きかったらしく、何人かの生徒が立ち上がって此方を見ているし、マダム・ピンスの雷は今にも落下寸前だった。さっさとこの場から去った方が良さそうだ。
私が「じゃあ、それだけだから」と立ち去ろうとした時、マルシベールがサッと杖を構えたのが見えた。私も咄嗟にポケットから杖を抜く。それを見たマダム・ピンスが「杖をしまいなさい!」と絶叫した。
そんな事もお構い無しに、マルシベールが口を開いた。もう、何かしら私も唱えるしかない。でないとやられちゃう――

「ステューピファイ!」

ほぼ同時だった。私の杖から赤い閃光が飛び出し、マルシベールの放った呪文にぶつかった。呪文は跳ねて、本棚という本棚を飛び交った。周りにいた生徒が叫びながら逃げ惑っている――その生徒の群れに揉みくちゃにされながら、マダム・ピンスが金切り声を上げて怒っているのが見えた。私とマルシベールの放った呪文は図書室を思う存分暴れ回ると、ピタッと収まった。周りを見渡すと、本棚はめちゃくちゃになっていた。

ミス・ミョウジ!!!

ギクリと振り返ると、鬼の形相をしたマクゴナガル先生が、こちらへとつかつか歩み寄って来るところだった。その後ろには、同じように憤怒の表情を浮かべているマダム・ピンスと、何故ここにいるのか分からないという表情でオロオロしているスラグホーン先生の姿。きっと騒ぎを聞きつけた誰かが、呼びに行ったに違いない。

「今すぐ私の部屋に来なさい」
「……はい」

私の声は今にも消え入りそうだった。マクゴナガル先生に着いて行きながら後ろを振り返ると、マルシベールがニヤニヤ笑っているのが見えた。







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -