03 ムカつく奴ら




新学期早々こいつらの顔を見ることになるなんて、予想外だ。
リリーの様子を窺うと、彼から顔を背けて完全に無視をする体制に入り始めている。
当の私はと言うと、シリウス・ブラックと久しぶりに接近してしまったことにひどく動揺していた。その証拠にブラックを見た瞬間から心臓が拍数を上げ、激しく私の胸を叩き続けている。


「やぁエバンズ久しぶりだね!僕達座る場所が無くて困っているんだ。ここ空いてるかな?」

ジェームズ・ポッターは速射砲のようにそう捲し立てると、まだ許可も出していないというのにずかずかと中に入ってきた。これには無視を決め込んでいたリリーも流石に怒り、「何勝手に入ってきてるのよ!」と立ち上がったが、彼らはそんなことをものともせずに空いている席に座る。
ジェームズ・ポッターとは話したことは無かったが、このあまりにも傲慢無礼な態度に開いた口が塞がらなかった。

リリーはというとそんな彼らにあからさまに嫌な顔を向け、そのあと窓の外を見つめたままそれっきり黙り込んでしまった。
私も無視をしようと窓から見える景色に視線を移したが、それ以上に熱い視線を斜めから感じる。
そのちくちく刺さるような視線に堪えきれなくなり、思わず振り向けばその視線の犯人……ジェームズ・ポッターと目が合った。
彼はハシバミ色の瞳をぱちくりと瞬きすると、何やら考える素振りをして口を開く。

「あれ?君は確か……」
「え?」

そこまで言いかけて、今度は何やら思い出したようにニヤニヤしながら隣にいるシリウス・ブラックに耳打ちをした。気まずくて俯いた私の耳に、あの時と同じ言葉が流れ込んでくる。


「あー思い出した!お前あん時のブスだよな!」


私の心臓がドシリと重くなった。
声のした方へゆっくりと顔を向ければ、シリウス・ブラックが当時と同じような顔でニヤニヤしている。

負の感情が一気に押し寄せ頭をグルグルと廻り、吐き気がした。
自分でも分かるくらいに全身が怒りで熱って、息苦しいくらいだ。
さっきまで外を眺めていたリリーが勢いよく立ち上がり「……何言ってるのあんた!」と激しく怒っていたが、それも全て遠くのように感じる。私だけガラスケースの中にいるみたいだ。


私はシリウス・ブラックに静かに近付き、真っ直ぐにその瞳を見つめた。久しぶりに彼の顔を、そして灰色の瞳を正面から見た気がする。寧ろ初めてかもしれない。
成長した彼はやはりなんとも整った顔で、その嘲るようにゆがめた口元がなんとも憎たらしく、私はその顔面に拳を一発打ち込んだのだった。




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テーマ「人外ファンタジー」
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