22 ファーストネーム




太った婦人に合言葉を言い扉が僅かに開いた瞬間、中から物凄い歓声が外まで漏れ出した。予想はしていたが、やはり今回の試合はグリフィンドールが勝ったらしい。リリーが笑顔でこちらに振り向き、私も思わず顔が綻んでいた。
絵画をよじ登って中に入っていくと外から聞こえてきた時よりも何倍も大きくなった歓声に思わず顔をしかめ、暖炉の前の集団に目を向ければポッターとブラックが肩を組んでバカ騒ぎをしている。

「戻ったんだね」

騒がしさから逃れようと部屋の隅に移動すると、不意に後ろから声をかけられた。振り向けば部屋の隅にある椅子にルーピンが腰掛けていた。「あいつらと一緒に騒がないの?」と少し茶化せば、「君が来る前に散々騒いだからもう疲れたんだ」と笑いながら頭を掻く。その姿になんだか胸がぽっと熱くなるのを感じながら、ルーピンの「隣へどうぞ」という仕草に従い遠慮がちに隣へ腰を掛けた。
リリーはというと、騒ぎの中にすっかり巻き込まれてしまったようでグリフィンドール生の波に揉みくちゃにされている。しかしその表情はどこか少し楽しそうだ。

「あ、ポッターに話しかけられてリリー怒ってる。」
「ふふ、本当だ。ジェームズも懲りないね。ところで君はあっちに行かないの?」

リリーとポッターのやり取りを遠巻きに見ながらクスクスと笑っていると、ルーピンが悪戯そうな顔で聞いてきた。

「わ、私もさっきまで慣れない勉強をして疲れてるからいいや」
「エバンズと二人で?」

「う、うん。リリーは頭が良いから教えてもらってたの。来年O.W.L.もあるし……」と少し戸惑いながら答えれば、ルーピンは「ふーん」と疑う様子もなく頷く。本当はスネイプも一緒だったが、念の為に黙っておいた。きっとスネイプも一緒だと言ってもルーピンはポッターやブラックみたいに怒ったりしないんだろうけど。

「リリーが来てないって知ったらきっとポッターも悲しむね」
「そうだね、今回なんて特に大活躍だったから。とか言ってミョウジ、君本当は内心ザマァ見ろって思ってるでしょ?」

またしても悪戯っぽく笑うルーピンに「まぁね」と同じような悪い顔で笑い返した。ルーピンのこういう悪い顔を見ると、やっぱりあいつらの友達なんだなぁと思い知る。でもルーピンのこの悪戯顔はあいつらとは全然違っていて、私はとても好きだった。
すると不意に「あっ」と隣でルーピンが声をあげた。その視線の先に私も目を向ければ、リリーが何やらジェームズに憤慨している様子だ。そして人混みを掻き分けて真っ直ぐに私の元へ向かってくる。

「ナマエ!もう部屋に戻りましょう!」
「え、うん。……じゃーね、ルーピン」

リリーの剣幕に押されつつもルーピンに小さく手を振れば、ルーピンも「うん、おやすみナマエ」とにっこり微笑みながら手を振った。
「え?な、名前……」と驚いたのもつかの間、私はリリーの腕に引かれて寮に連行されてしまったのだった。




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