20 秘密の場所




食事が終わると、私は一目散に大広間を飛び出していた。途中何度か肩がぶつかり、嫌な顔をされたり、先程の騒ぎのことを小声で噂されたりしたが今はそんなこと気にしていられない。一刻も早く部屋に戻りたかった。
大理石のホールを横切り、階段を中ほどまで登った時「ナマエ!」という声が響き渡る。
振り向けば、人を押し分けながらリリーが近付いてくるのが見えた。
リリーは階段をかけ上がり私の前で立ち止まる。それから肩で息をしながら私を真っ直ぐに見つめた。



「話してくれないの?」



リリーのその真剣な眼差しに息が詰まる。彼女に隠し事をしている罪悪感で押し潰されてしまいそうだ。

私は彼女から一度目を反らすと再び彼女のエメラルドのような瞳を見つめ、

「ついてきて」

と一言発するのがやっとだった。





お互いに言葉を交わすこともなく階段を上り、四階の図書室の前まで来ると、私はゆっくりと扉を押し開いた。

そこかしこに舞っている埃は窓から差し込む光によってキラキラと輝き、図書室は幻想的な空気に包まれているかのようだ。何の物音もしないその教室へ一歩踏み出すと僅かに床が軋む音が響き、埃がゆるやかに舞う。埃の優しいベールの中を、私は彼を探すように歩いた。図書室の奥の良く彼が座っている席まで歩くと、案の定、私の探していた彼ーーセブルス・スネイプはうねった髪を垂らして本を読みふけっていた。



「ミョウジ……と、リリー?」



柄にも無く目を見開いているスネイプは直ぐ様事情を悟ると、視線を私にずらし睨み付ける。

やっぱり、だから、嫌だったんだ。

スネイプはきっとリリーに私との仲を疑われるのを嫌がるに違いないというのは分かりきっていたことだし、私も何となくリリーに言えなかったのもそういうことがあったからだと思う。

「じ、実は時々図書室でスネイプに勉強を教えてもらってて……来週も教えてもらう予定だったの」
「まあ!」

当のリリーは一瞬驚いた表情を浮かべていたが、今やいつものかわいい笑顔のリリーに戻っていた。


「最近ナマエが勉強するようになったと思ったら、こういうことだったのね!何故隠していたの?言ってくれれば私も一緒に勉強するのに!」
「そ、それは、いつもリリーに頼ってばかりじゃいけないと思ったからで、それにリリーの大切な友達を取ったみたいで何か言えなくて……」
「あら、何言ってるの?私達みんな友達でしょう?ね、セブ?」



無理矢理に言葉を紡ぎ合わせながらスネイプの表情を盗み見れば、彼は相変わらず私を睨み付けていたが、リリーの有無を言わせぬマリア様の様な笑みを向けられたとたんに「あ、ああ……」とたじろいだ。その姿に思わず吹き出した私をスネイプはまたもや睨み付ける。



「これからは一緒に勉強しましょうよ」



リリーの優しい声が図書室全体に反響する。もちろん答えは既に決まっていた。

私とスネイプは口を揃えて「うん」と答えたのだった。





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