18 自立




「ナマエ、あなた最近こそこそしてるわよね。私に隠れて何やってるの?」

談話室でリリーの魔法史のレポートを書き写している時、リリーが唐突にそう呟いた。驚いて思わず振り向けば、リリーは眉間に皺を寄せ珍しく不機嫌な表情を浮かべている。これは面倒な時のリリーだ。瞬時にそう察した私は一度休めた手をまた動かして何事も無かったかのようにレポートの続きを書き始め、「そんなことないよ」と不自然な返答にならないように気を付けながら答えた。

「あらそうかしら?でも本当に最近変わったと思うわ、だって自分から進んで勉強もするようになったし……何かあったの?」
「失礼ね!私だって自分から勉強したくなる時だってあるわ!」

私が羽ペンを置きリリーに反論すれば、リリーは「そうよね、ごめんなさい」と謝った。が、その口元は僅かに弛んでいる。それを睨み付けながら鼻をわざとらしくならすと、ついにリリーは堪えきれずに吹き出してしまった。相も変わらずくすくすと笑い続けているリリーにため息をつく。
確かにリリーの言う通りだ。以前の私はほとんどリリーに頼りっきりだった。しかしスネイプに何度か教えてもらうようになってからは自分から進んで勉強に取り組むようになっていた。これは勉強が苦手な私にとって目覚ましい進歩である。リリーがそのことに気が付き、勘繰るのも仕方がないことだ。それでも何故だか、スネイプに勉強を教えてもらったことをリリーに打ち明けられずにいた。打ち明けたところで、何かがあると言うわけでもないというのに。

「……でも私、ナマエがそうやって自分からやる気になってくれて嬉しいのよ。……少し寂しいけど。」
「……寂しいって?」

リリーは急に寂しそうな顔でそう言い、肘掛け椅子に沈み込んだ。そんなリリーを思わず見つめる。

「……だってナマエが離れて行っちゃうみたいなんだもの。」

リリーがそんな風に感じていたなんて、ましてやそんなことを言うなんて思いもしなかった。寧ろ彼女を遠くに感じていたのは私の方だと思っていた。リリーは頭が良くて何でも出来て、私にとって憧れでもあったからだ。その言葉を聞いて、私は思わず目を見開いていた。

「馬鹿みたいよね」

そう自嘲気味に笑う彼女に返事を返す代わりに、手を握りしめる。リリーは一瞬驚いた顔をしたあと、いつもの私が大好きな笑顔で私に笑いかけた。




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