16 意見の相違
「何でって……君本気でそんなこと言ってるのかい?」
ポッターが馬鹿にするような顔をした。その表情になんだか腹が立ち顔をしかめる。
「スネイプは闇の魔術にどっぷり漬かった奴なんだ。」
「闇の魔術?ただ闇の魔術に対する防衛術の先生になりたいから詳しいんじゃな……」
「お前馬鹿か」
私が言い終わらないうちに、ブラックがそう言った。話を聞いていて思わず口を出してしまったようだ。苛々した表情をしながら腕を組んでいるその相変わらずの傲慢な態度に、私の眉間に刻み込まれた皺がまた1本増える。
「スリザリンに闇の魔術、そんなの言わなくたって決定的だろ。」
そう言って薄ら笑いを浮かべた。ああ、この薄ら笑い、大嫌いだ。そう思った瞬間に反論の言葉が待っていましたと言わんばかりに口から溢れ出していた。
「決定的?そんなのあなたたちの偏見でしょ。」
「あのな、スリザリンはマグル生まれを差別するような奴らで……」
「スネイプはリリーの幼なじみなのに有り得ないわ。」
私とブラックの間に激しく火花が散った。今の私は驚く程に勇敢だと思う。さすがグリフィンドールと言うべきか、端から見ればライオンに噛みつく猫のように見えるだろう。しかし私は負けるものかと怯むことなくブラックを睨み続けていた。今はこいつが怖いという感情よりも、憎たらしいという感情が遥かに勝っている。
「どっちが正しいかはいずれ分かることだ。」
「ええそうでしょうね!あなたたちが間違っているということに早く気が付けるといいわ!」
私は吐き捨てるようにそう言うと手袋を外すのも忘れて温室から飛び出した。10月も近付き少し肌寒くなった風が激しく頬を切る。しかしそんなことを物ともせず、そして一度も後ろを振り向かずに私は談話室まで走った。
「ナマエ、お疲れ様。どうだったの?」
談話室に着くなり、空いているソファーに深々と座り込む。そんな私に気が付いたリリーは心配そうな顔でそう聞いてきたが、それに答える気力も沸かず、私は一度小さく首を振っただけだった。
「また何かされたの?」
「違う。スネイプのこと。」
リリーはスネイプの名前が私の口から出たことに一瞬驚いた顔をしたが、すぐに冷静な顔に戻り私の隣に座り込んだ。
「なんかあいつら、私達がスネイプと仲良くするの良く思ってないみたい。」
手に握り締めた手袋を見つめながら小さく呟いた。そう言いながらもまた顔をしかめたので、更にもう1本眉間に皺が増える。私の眉間に深く刻み込まれた皺は、どんな魔法を使っても元に戻らないような気がした。
「あいつらの言うことなんて気にすることないのよ。私達が誰と仲良くしたってあいつらには関係のないことなんだから。」
リリーが隣で憤慨するように言った。確かにリリーの言う通りである。ポッターの場合、リリーと幼なじみというポジションにいるスネイプに多少の「嫉妬」の気持ちが入っているのだろうが、ブラックにおいてはただポッターに便乗しているようにしか見えない。
うん、絶対気にするもんか。
「でも私、ナマエがセブルスのことであいつらに言い返してくれたことがとっても嬉しいわ!」
「……リリーの幼なじみだもん当たり前だよ。それに私も彼には助けられたし……」
「魔法薬学の授業の時にね!」
リリーが不思議そうな顔をしたので急いで付け足した。危うく墓穴を掘るところだった。それからリリーは納得したように微笑むと、私の手に握られた手袋を指差して「明日返さなきゃね」と悪戯っぽく笑った。