15 余計なお世話




驚いて顔を上げれば、ブラックが得意満面で私を見下すように立っていた。これはテジャヴか何かだろうか。

「これで証拠も無くなったわけだし、成功だろ!」
「さぁ相棒、さっさと帰ろうではないか。ミョウジ、君スプラウトにもう終わったって伝えて来てくれない?多分あっちの温室にいるからさ。」

ポッターは陽気にそう言い、入り口から身を乗り出して2つ隣の温室を指差した。「薬草の手入れでもしてるんじゃないかな。」
私は口を開きかけ、閉じ、また口を開いた。聞きたいことがたくさんあったのだ。ポッターが私にしようとした頼み事、肥料に何という呪文をかけたのか。しかし手始めにまずブラックがかけた「スコージファイ」について聞くことにした。

「あ、あの……。」
「なに?」
「さっきの呪文、習うのはまだ先なはずなのに、……な、何で出来るの?」

意を決して質問したと言うのに、ポッターとブラックが顔を見合せて大爆笑を始めたので恥ずかしいやら腹立たしいやらで顔に血が上るのを感じた。今や私の中では聞かなければ良かったと後悔が渦巻いている。

「君、僕達が天才だってことすっかり忘れてるだろ?」
「まぁ、あんな簡単な呪文天才じゃなくても出来るけどな。」
「ああ。とても簡単さ!」

「簡単そうには見えなかった」、という言葉を私は飲み込んだ。そんなの、この学年上位の秀才くん達に言った所でまたさらに笑われるだけだろう。悔しいけれど彼等が天才だと言うことは認めざるを得ないし、私が馬鹿だと言うことも明らかな事実なのだ。とてもじゃないが反論は出来ない。

「それにしても、ミョウジがこんなピーターみたいなやつだったとはね。……まぁ僕としてはそれ以上に、シリウスがそんな彼女に杖を奪われたってことの方が驚きなんだけど。」
「……その話はするな。」

突然ブラックの顔から笑顔が消え、手に持っていた手袋を乱暴に机に叩きつけた。私は冷水を頭からかぶったかの様に心臓が一気に萎縮したのを感じた。彼の地雷を踏んだのだ。しかもとても華麗なステップで、私じゃなく親友のポッターが!
しかし当のポッターは気にも止めていないかのように相変わらずニコニコして、「ねぇどんな裏技使ったんだい?」などと隣で私を茶化している。
ブラックはそんなポッターに恐ろしく不機嫌な顔を向け睨み付けながら「やめろ」と唸った。
「もう帰ろうぜ。」
しかめっ面で温室を出て行ったブラックの後に続く様にポッターも歩き出したが、温室の入り口から一歩前の所で急に立ち止まり、振り返った。

「あ、そうだ。危うく忘れるところだったよ!」
「……な、何?」
「ああ、君もエバンスも、スネイプと仲良くするのは止めておいた方がいいよ。」

そう言った彼の笑顔は、温室の僅かな明かりに照らさてなんだかとても不気味に見える。私は思わず「なんで?」と聞き返していた。




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