14 二人




「僕、君と二人で話しがしてみたかったんだ。」

私がやっと10個目の植木に肥料をスコップで蒔き終えた時、不意にポッターが呟いた。小さめな声ではあったが、二人しかいない温室には他にツタが時々立てるビシッという音やスコップで肥料を集める音しかしておらず、ポッターのその声はそんな静かな温室に充分すぎる程に響き渡った。

「え?どういうこと?」
「いや、実は君に頼みたいことがあってさ。誰にも聞かれたくない話なんだ……」

彼は私と目を合わせずに言い、スコップをざくざくと絶え間無く動かし続けている。やり方があまりにも適当なので、こぼれ落ちた肥料が植木を囲んで小さな山を作っていた。
私は彼の発言に顔をしかめて口を開きかけたが、その時ちょうど温室の扉が開く音が聞こえた為、行き場を失った言葉を飲み込んだ。

「進んでるか?……ってなんだこの植木の量は。」

後ろを振り返れば、温室の入り口にブラックが立っていた。彼は手袋をはめながら温室を見渡している。ポッターはスコップでわざとらしく肥料を何度も耕し、さっきよりもざくざくと大きな音を立てながら「スプラウトがこれを今日中に終わらせろだとさ。」と眉根を寄せて呟いた。

「今日中に?そりゃなんて素敵な罰則をスプラウトは俺達にプレゼントしてくれたんだ。」
「本当、最高だよ。」
「魔法を使えばどうにかなるんじゃないか?」
「やってみようか。」

隣で「ロコモーター!」とブラックの呪文を唱える声が聞こえ、肥料の入った袋が宙を舞うのを視界の端に入れながら、私はブラックから少しでも離れようと温室の入り口付近に移動した。ブラックは温室に入ってから一度も私に視線を向けることはなく、どうやら有り難いことに私を空気のように扱うことに決めたようだった。外を見れば既に日が沈み、遠くにあるホグワーツ城に灯った光が優しく揺れている。肌寒くなる風が頬を霞め、私は思わずローブを首もとまで引き上げた。

ポッターとブラックは何やら色んな呪文をかけていたが結局どれも上手くいかなかったようで、最終的には大きな破裂音と共に肥料の袋が爆発してしまった。ドラゴンの糞からできたその肥料は、温室全体――無論、ポッターとブラックにもだが――に飛び散り、悪臭を放った。(幸いにも、入り口付近に立っていた私は左肩の半分が糞まみれになるだけで済んだ。)
ポッターとブラックは顔を歪めてローブの袖で顔を拭っている。

「まぁなんだ……これでこの温室全体に肥料が行き渡ったわけだ……」
「ああ……これはある意味成功だと言えるだろう……」
「全然成功じゃない!」

憤慨しながら肩にかかった悪臭を放つ糞を苦々しく見つめていると突然「スコージファイ」と言う声が聞こえ、糞が綺麗さっぱり消え去った。




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