13 罰則




気まずい気持ちで彼の数歩後ろを歩く。彼はご機嫌にも鼻歌なんかを歌っていた。こいつは何か企んでいるに違いない。絶対にだ。

「君って嘘つくの下手だね。」

玄関ホールを横切りながら、不意にポッターがぽつりと言った。その言葉に驚き彼を見つめる。僅かに暗い玄関ホールに浮かんだその顔には、怪しい笑みが張り付いていた。

「迷子になっただって、笑っちゃったよ。僕だったらもっと上手い言い訳を考えただろうね。」
「おあいにくさま、私は普段あなたのように嘘をつかないので。」

私が正面玄関の石段を駆け下りながらポッターの顔も見ずに言えば、隣から微かに笑い声が洩れた。

「多分だけどさ、教科書隠したのシリウスだと思ってるよね?」
「……うん。そうでしょ?」
「あれ僕がやったんだよ。」

私はその言葉に顎が外れそうなほど驚愕した。ずっとブラックだと思っていたのに、まさかこいつだったなんて。
予想通りの反応をしたらしい私を見てポッターは大きな笑い声をあげ、それからいつものようにべらべらと一人で話し始めた。

「やっぱりね!それにしても、罰則になるとは僕も考えてなかったなぁ……。まぁ、温室に行くということは薬草学の手伝いだと言うことに間違いないんだろうけど。マクゴナガルはきっと罰則として手伝いをさせて欲しいってスプラウトに頼まれたんだろうね。だから人数合わせに関係ない僕達まで巻き込まれた。そうに違いない。」
「関係なくないでしょ!」

正面の扉を抜け、野菜畑の土を踏みしめながら大声を上げた。ジェームズは相変わらずムカムカするようなとびっきりわざとらしい笑顔を浮かべている。
温室へ近付くと、ずんぐりとしたシルエットが見えてきた。
そのシルエットがはっきりとスプラウト先生だと認識できる距離に更に近付いた時、先生は私達に声を掛けた。

「あと一人はどうしたの?」
「彼は後から来ます。」
「そう、なら先に二人で作業を始めてもらいましょうか。そこにある手袋をはめて……」

温室に入りながらそう言うと、一番近くにある机を指差した。その上に茶色くて頑丈な手袋が置いてある。私は言われるがまま手にはめ、温室を見回した。温室は外のほとんど沈みかけた夕日によって照らされ、なんだか薄暗い。

「二人にはこのドラコンの肥料をスコップでこの植木に蒔いてもらいます。」
「え?この量を?」
「そうです。そのための罰則ですよミスター・ポッター。さぁ早く始めないと夜中になってしまいますよ!」

目の前に広がる数百個は下らない植木を見つめながら「そんな……」と隣で絶望的な声を上げるポッターと、初めて意見が一致したような気がした。到底今夜中に終わりそうもない作業だ。
私はスプラウト先生の言う通り、すぐに作業に取りかかった。ポッターもぶつぶつと文句を言いながら一番近くにある植木を適当に引っ付かんだ。




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