03


あーなんか、ふわふわして、気持ちいい。

夢と現実の狭間でまどろんでいる、あの感覚。
つまり、私は寝ているのだろう。この感覚は、好きだ。素直に、身を委ねる事にしよう。


『……さい』


と思ったのに。
安眠を妨げるように声が聞こえる。


『……けて……さい』


うーうるさ、い……さっきまでなんかいい感じの夢、を……。

そこまで考えて思い出した。

そうだ、私精霊に会ったんだー…。なんだ、夢か……まぁそれもそうか。それが妥当だよね。


『お…て……さい! 起き……さい!』

「う、ん………」


精霊の、夢か。
精霊の夢とか、現実逃避したいのかな私。


『起きて……さい!!』


いやもう、うるさいなぁ、お母さんたら、そんな………うん? あれ? お母さん? 何か、違う?
ぼんやり霞掛かった頭に、漸く違和感が生まれる。
いつも、朝、響く母の声………じゃ、ない?


起きなさい!!
「はわぁあ!? ごっ、ごめんなさっ……」


飛び起きて、反射的に謝る。

いつもならお母さん、ごめんなさい。だけどその台詞は当てはまらない。


「あ、あれ……?」


しぱしぱ、と瞬きを繰り返す。
私の前にはさっき見た精霊、せーなんとか。
瞬いても、せーなんとかは、居る。


「まだ、夢………?」


何だかよく解らないまま、首を傾ける。
周りは色んな色の霧ようなものが漂っている。
そして、まだ夢の中にいるような浮遊感。


『違います。これから私の話を聞いてもらいます。貴方には酷な事かもしれませんが、質問は後にして下さい』

「え、ちょ、待ってよ。ここどこ、あ、夢か」


急にドバーと話し掛けられて、まあ、殆ど耳には入っていないが、とりあえず、頭がこんがらがる前に、夢だと言い切った。夢だと片付けた。
うん、よし、イケる。

はたして何がイケるのか、自分で思っておいて謎だが、私を見ていた精霊は、はぁ、と溜め息を吐くと、再び一気に話し出した。


『だから、違います。ここは時元の狭間。時間がありません。黙って、聞いて下さい。質問は後、です』

「は?なん……」
『あなたは救世主の魂を持っています。私はずっと貴方を探していました。私の神を、《フォクス》の神を、救ってほしいのです』

「何言って……」
『救世主の役目は、神々の力の解放です。つまり、貴方の使命』


再び、どころではなかった。ものっそい喋り始めた。
そしてその内容は、余りに突拍子もない。と言うか、おかしな話になってきている。
神とか、何言ってんのこの馬。訳解んない。

けど。


『貴方が役目を果たせば、精霊の力も強くなり、世界に正しい気が満ちる。世界の創造主、《フォクス》の神、あの方の力も満ちていくのです』


訳が分からない。
けど、聞き漏らしてはいけない気がした。どんなに、ふざけた内容で、意味不明でも。

彼は必死だ。

瞳が、声が、全身で訴えているから。


『いずれは、貴方が帰ることの出来る力になる』


無下になど、出来なかった。


『あの方が、帰して下さるでしょう』


そこで、間が空いた。
質問、してもいいのだろうか。


「あの、」
『! チッ、気付かれましたか』

「え」


え、ぇえええ!? い、今舌打ちしたよこの子!?


『仕方ありません。質問はなしですね。メグミ』

「!!」


なんで、名前……、


『セ一レシウスの祈りを捧げます。貴方に世界神の加護がありますよう……』

「へ、わ……」


精霊が白い光を発し、精霊と私を包んだ。魂を見たとかなんとかほざいていた時の光よりも淡く、優しい光。


「あ…………」


なんだか、暖かい。
布団の中に、いるみたい。

ぬくぬくとしたそれに、つい、瞼が落ちる。気拷ちが良くて、身を預けていた、ら。

ガクンッ

と足元から落ちた。


「って、ぇぇえええええ――――」


お ち て る 。


内臓が飛び出そうだ。
辺りは真っ暗で何も見えない。私のばか、何で目を閉じたばか! 死ぬって! ばか! 死ぬ!

この状況で気を失わない人間は居ないと思う。


予想通り、私は意識を手放した。













私×精霊=驚き連鎖



(落ちるとか、)
(ベタすぎる)
(ベタな展開なのに)
(覚悟してなかったなぁ)



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