07


この世界の全ての神、世界神。
世界神が作った特別な、魂。

あんたはそれを持っているのか。
世界が待ち望む、それを。






FANTASY
は続くよ
何処までも














「だから、救世生だって、……そう、言いたいんだろう?」

「ちがっ! なんで! な・ん・で、そうなるんですか!?」


難しい顔したオズさんは、私の否定に首を傾ける。違うと言っているのに、なんで解ってくれないんだ。
救世主とか! 普通に会話してたら出てこない単語でしょうが!


「? いや、自分でそう言って……」

「言ってません!」


なんだ! 日本語やっぱり通じないのか! とか思ってしまうくらい、話が通じない。
違うって言ってんでしょうが。心底不思議そうな顔すんな! でもそんな顔もイケメン! 私ちょっとおかしくなってきてる!


「?? えーと、世界が歪み、壊れてしまう。
憂いた神は、希望の光を与えた。
星の精霊に導かれ、神の落し子は世界を救う」

「? は? え?」


言い終えて、オズさんは私を指した。


「あんたが言っているのはこういうことだ」



ポカン、とした後。

唐突に、理解した。


セーレシウスは言った。救世主の魂を、私の中にみつけたと。

神を、世界を、救って欲しいと。

オズさんと同じ、翡翠の瞳を揺らして、懇願にも似た、言葉で。


セーレシウス、流星の名を持つ、精霊。



あぁ、碌でもないことが、
起こる。



「ソウ、ミタイデス……」

めちゃくちゃだ。救世主って………中2か。こんなにファンタジーな世界なら、言ってもありなんじゃないか?

何を? そりゃ、決まってます。

トリップについて。
割とあぁ、よくあるある、みたり感じで、意外とすんなり解決方法が見つかるかもしれない。


「あ、あのっ!」
「マジかよ……っ! それが本当なら……まだ間に合うか!?」


私なりに思い切って、訊いてみようと口を開いたのに、私の声を遮ったオズさんは、興奮したように拳を作っている。
うわ、目がめっちゃキラキラしてる。


「え、えと、」
「あぁ! その前に! あんたが本物かどうか確かめないとなんねぇな!」


聞けよ。


「あ! 別にあんたを疑ってるわけじゃねぇんだ。気を悪くしないでくれ!」


にかっ、と歯を見せて笑う。お、おお、ドキッとした。こんな時に、思う私も私だが、イケメンは無駄に笑顔を晒してはいけないと思う。そのうちね! トキメキ過ぎて倒れる人とかね! 出ると思うんだ! そしてそれは今果てしなくどうでもいいことですよね………!
自分でも呑気だと呆れそうになるが、多分、私の頭は今、正常に働いていないのだと思う。
だからどうでもいいことばかり浮かぶし、かと思えば、トリップしてしまったんだと事実を認めている自分がいたりする。
今浮かんだ無駄な思考は、とにかく誰にでも呆れられるような事だから、何だか後ろめたくなって、輝く瞳を向けるオズさんを、直視出来なかった。
チラリチラリと見やり、曖昧に頷く。


「は、はぁ、別にいいですけど……でも確かめるってどうやって……?」


誤魔化すように質問を繰り出す。
うう、こんな事になっても、美形笑顔にドキドキするとか、私って現金な子だったのね……チクショウイケメンめ!


「精霊に聞くんだよ。決まってんだろ?」


決まってるのか。中2か。
オズさんと精霊。なんて似合わないんだ。にっと笑うオズさんには、そうだな、サッカーボールとか、似合いそうだ。
あ、やだ、凄い似合うどうしようフィールドを颯爽と駆けるオズさん今草原に立っている事も相乗効果でヤバい凄い似合うぉおおいキャプテェエエン!

て、そうじゃなくて!
私ほんと大丈夫かキャプテンってなんだ落ち着け!


「あ、ね、その前に聞いて欲しいだけど……」

「風の精霊よ、契約の基にその姿を……」


聞 け よ 。


イケメンだからって、無視したらいけないと思います自分!


「我が前に現わさん!」
「ちょっと! 聞いて……ん、の……」


ちっとも言葉を続けられなくて、多少の不快感から声を張り上げた私だが、途中で言葉を失った。
風が、彼の周りを渦巻いて、光を放っている。だんだんと彼の頭上に集まって、辺りに溶けた。
これだけでも驚きものだが。

彼の頭上には、見たことのない生き物が、浮いていた。


丸いフォルムに円らな瞳。色は全身薄い緑色で、背中に白い羽が生え、胴体に申し訳程度に手足がくっついている。

一言で言うなら、


「かかか、かわいいーっ!」


何だこの心を一気に奪われる可愛いのは!
オズさんの頭にちょこんと座った、その動きさえ可愛い。オズさんがおっきいから、余計ちっちゃく見えて………。


「こいつは風の精霊シルフ。俺の契約精霊だ」


精霊さん! 可愛い! 可愛いよ!癒される!
そうか、これがファンタジーの力………! 私、前向きになれそうです中2でもいいです!
だからこの際、契約精霊って何だってのは後回しにするよ!


「シルフ、こいつが救世主かわかるか?」

『Φё』


うはっ、鳴き声までキュートときた………!
ミュウ、と鳴いた精霊に、オズさんが手を伸ばすと、精霊はオズさんの指を、小さな手ではしと掴む。可愛い。
オズさんが自分の顔の横に、精霊ごと手を降ろす間、頑張って掴まっている様子が見て取れる。可愛い。


「それで?」

『φфжθ!』

「そ、うか! そうかー! すげ、マジかよ……!」

『юψ!』

「だな!」


いや可愛いよ? 癒されるよ? その鳴き声は。
だが、突っ込まずにはいられなかった。


「いや待て。待て待て。明らかにおかしいよね?」

「あん? 何が? っと、そんなことより!」


何故今ので会話が成り立ったのか、突っ込まずにはいられなかった。
そんな事よりってどんな事より気になりましたけど。
全く気にしてないオズさんに、ええぇ……と思っているうちに、可愛いのがオズさんの影に隠れてしまった。
あぁ! 癒しが! 別に君は悪くないんだよ! でも気になるの!


「マジで本物! っ…しゃっ! 決めた!」

「今、ミュウ、とか、ミュミュ、とかしか言ってないよね?」

「とにかく、まずは俺んちに行くか! おら、立てるか?」

「さっきからスルーがすごいんですけど。総スルーなんですけど」


コメディドラマをしたい訳じゃありません。
悲しくなってきたので、声に出して訴えただけです。め、目が熱いなんて、そんなことないんだからねっ。


「はは。ずっと思ってたけどあんた変な奴だな」


ツンデレ風に心で訴えるも、爽快な笑顔で、言われた、悪口。やんのかコンニャロ……!


「オズさんには言われたくありません」


私は変じゃない。とてつもなく普通だ。

変なのは精霊を出して、会話とかしてる貴方の方だ。
ミュウミュウに、だな! とか返してる貴方の方だ。これでもちょっと引いたんだぞ。


そして今も、変な顔をしている。

ちょ、何だその微妙な顔は、せっかくの美形が台無しだ。


「オズ、さん……て、なんか、いやだな」

「ええぇー……」


あんたがそう呼べって言ったんだろうがぁあああ!
今更言われても、あの長ったらしい名前なんて憶えちゃいない。

愛称で呼ばれたくないとか、傷つくんですけど!?


「すいません。長いほうの名前は憶えてません」

「いや、そうじゃねぇよ。はは、そうじゃなくて、オズ、でいい」


首を傾け笑う、キャプテ、あ、違った。完全に私の中で、爽やかスポーツ少年というイメージが定着している、彼の、言っている事がイマイチ解らなくて、首を傾げる。


「? だから、オズさん」
「オズ。さんは無し」


あ、そういう意味ね。
即座に切り返されて、理解する。ほれ、呼んでみ、と言うように顎を動かしたオズさんに、促されて、おずおずと、思わず口にしたが。


「お、オズ……」

「ん」


なんか、
恥 ず か し い
んですけど!!











(どんな羞恥プレイ!?)
(顔、赤くねぇ?)
(! き、気のせいです!)



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