「ははっ、しっかし窓から落とすとはなー」

「クソガキにしてはいい判断だ」

「もー! 私本気で焦ったんだからね!? なに和やかに談笑してんの!?」


それはいざとなったらシオンさまはウィンストンさまに怪我などさせないと解っているからなんだろうけど。
何故なら後々困るのはメグミだからだ。


「ちょっと手の甲にキスされただけでそんな、」
「「「キス!?」」」

「ぶっ殺す!」
「沈める、まじで」
「同感だ」
「行くか」
「「「おう!」」」

「おう! じゃねぇよぉおおお! 何処行くんだ殺気出すなっ!」

「何処ってそんなの決まってんだろ」

「「「ウィンス」」」
「聞きたくない!!」


キスぐらいなんだ! お望みならくれてやらぁあああ!

と自棄を起こしたメグミに、皆さまの動きが止まる。
わたしは迷わず扉に向かっていたけれど。


「スイちゃんお待ち。
その手に持った鈍器は何に使うの

「え? ふふ、秘密ですわ。
ちょっと赤い汚れが付着するかもしれませんけど

「明らか殺意ぃいいいい!!」

「……………チッ、」


半泣きで縋りつかれ、仕方なく思い留まる。

チクショーあのボンクラ今度会ったらしばく。


「メグミちゃん、今くれるって言ったよね? ね?」

「へ? 何を?」

「クク、今更取り消しは効かねーからな?」

「え? え? ちょ、なに」

「オイ、てめぇらちょっと待て」

「フン、待てないな」

「わぁあああああ!」



あらあら、皆さま目が血走ってますわ。
最後に叫んで部屋を飛び出したのはアレクシア皇子。彼には刺激が強かったようで、真っ赤な顔で退散。
迫られたメグミは戸惑っているけれど、よく考えて発言して、と言ってあげたい。


「ちょ、な、なんなの」

「くれるって言ったよね?」

「だ、だから何を」

「んじゃ、頂きまーす!」

「へあ? わぁっ!?」


1番最初に飛び掛かろうとしたディーノさまから、素早く彼女を抱えて退避させたのはクロス騎士。

今日も始まりましたわねぇ。


「……………させぬ」

「チッ、やるね」

「たく、お前らは危険過ぎるんだよ、っと!」

「!」
「おわぁ!?」

「オズ貴様っ!」

「お前らに渡したらメグミが穢れるだろーが。じゃーな!」

「ちょちょ、ぎゃぁあああ!?」

「てめっ! 待ちやがれ!」


あー、これはお昼は温め直した方が良さそうね。

メグミ争奪戦は頻繁に起こり、そして1度始まったら中々終わらない。

やれやれと肩を窄める冷静派、キビトさまとアイリスさまにお茶を淹れながら、
あの方達も懲りないわね、と苦笑した。

きっとあと1時間したらメグミの雷が落ちる。
そうしたらやっと昼食。

それまでにわたしは彼女の為に温かい昼食を用意しよう。

そうして今日も、わたしの世界は貴女を中心に回る。










(いい加減にしなさい!!)
(だ、だってよぉ)
(メグミちゃんのちゅー…)
(は!?)
(くれてやる、そう言った)
(………言った、っけ?)
(……………コクコク)
(え………そ、それは手に、)
(クク、責任取れよ?)
(ててて手に! 手にだから!)
(今更おせーよ)
(私のバカヤロー!!)


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