一応終了を叫び、クロスを呼びながら、帰還。


「うう、ごめん、ごめんよクロス………」


あの子は真面目だから、ずっと隠れていそうだ。そうなったらご飯抜き……否、寝ないで一晩中、否、一生、なんて………


「ぎゃぁあああ! クロスゥウウウ!!」

「どっ、どうした!?」

「アレク! クロスが死んだら私のせいだ! どうしよう!!」

「死っ!? な、なにを」
「あの子はそういう子なのよ! 良くも悪くも真面目なのよ!」

「落ちっ、落ち着け! ちょ、迫ってくるなっ!」

「私どうしたらいいの!?」

「メグミ、静かにしろ」

「だってシオン! もがぁ!」

「静かに、しろ」

「ふ、ふぐふぐ」


お母さん、シオンが怖いです。

口を塞がれたまま頷く。


「………なるほど、考えたな」

「なに、どうしたの」


うるさくすると怒られる為、小声で話す。

理不尽なのは今更だ。
な、泣いたりしないもん!


「水の騎士は此処に居るぞ」

「えっ!」

「へぇ、頭使ったねー」

「始まりの場所を選ぶとはな」

「あっちだ」


着いたのはクロスの部屋。


「ぇえー………」


普通に自分の部屋かよ。
ノック……はするべきか?
迷っていると何の躊躇も無しに扉を開けたシオン。


「ちょ、勝手に、」

「何言ってんだ。隠れているのを見付けんだろ?」

「そう、なんだけど。いや、やっぱ人の部屋に勝手に入るのはまずいんじゃ」


オズが言っている事も正しいが、私も間違ってはいない。


「クク、オレはお前ならいつでも歓迎だぞ?」

「なんで自ら猛獣の檻に入らなきゃいけないのよ」

「おい、居たぞ」


じとっとした目でアダムを見ていると、クロスの部屋からキビトさんが顔を出した。


「じゃあ、鬼の勝ち、ですね。あ、でもシオンに手伝って貰ったんだからそれも微妙か」

「……………」

「あ、クロ、」


言葉が変に途切れたのは私のせいじゃない。
何故か私はクロスの腕の中で。


「うっ!? ふぐっ!」

「……………」


ぎゅむぎゅむ、と力一杯締め付けるられて、
ただ今、
窒息寸前です。


「馬鹿っ! メグミを離せ!」


おお、なんか、お花畑が………


「白目剥いてるぅううう!!?」

「ちょっ、メグミちゃんしっかりして!!」

「うふふ、綺麗なお花畑ー……」

「戻って来てメグミー!!」


ちょうちょを追っ掛け始めた辺りで、バシバシとアイリスの遠慮ないビンタが炸裂し、無事生還致しました。はい。

そしてどうしたのかとクロスを見てみたならば、


「こここ怖! 何コレこわっ!」

「……………」


お母さぁあああん!!
真っ黒なオーラを背負った瞳孔開いた人がいるぅううう!!

ご機嫌斜めどころか1周回って戻って来たくらい、ご立腹のご様子のクロス。


「寝てたんだ………起こしたら、こうなって」


うっかり近寄ったら斬られる。間違いなくヤられる。
寝起きのクロスには近付いちゃいけない。
しっかりと頭にたたき込んだ。


「……………メグミ」


ビックゥウウ! と大きく肩が跳ねた。

よよよ呼ばれちまったぁあああ!
名指し! 指名! 指名された!!


「……………メグミ」

「はぃいいい! すんまっせん! ホントすんまっせん!!」


さっきよりも鋭い視線で睨まれて、もう半べそ状態だ。

更に腕を掴まれて、恐怖でどうにかなってしまいそうです。


「たた助けてジョニー!!」

「いや誰だよ」


ジョニーはジョニーだよ!

だけどジョニーは助けには来てくれず(まあ、当たり前だけど)、ずるずると引きずられてクロスの部屋へ。


「はわわわわわ、何コレ、斬られる? 斬られるのこれ?」


そのまま般若のようなクロスはベッドに入る。「え、寝るの?」と思った瞬間、そこに引きずり込まれた。


「ぃい!? なっ、なっ、」

「……………」


じたばた暴れても、腕はしっかりと私を抱き込んで離さない。しかも足をからめられてそっちも動かせない。


「クロ、クロスっ、何してっ」

「……………」

「………ね、寝て、る?」


すぐそばで聞こえる息遣い。
段々と深く、規則的になっていく。


「寝るのはいいけどさ、がっちりホールドしたままは困るんですけど!」


本当に寝ているのか疑わしい程強く抱き締められて、抜け出す事は愚か、動かせるのは口だけという。


「おい、大丈………」


あ、ヤバい。


「お、お、」

「アレクっ、コレはちが、」
「女なんてぇええええ!!!」

「うんだ、けど………うん。ごめん。助けて」


叫び声と駆ける足音が遠ざかっていく。「アレク!?」とオズの声とまた駆ける足音がして、ため息を吐いていた私はまたため息を吐いた。
最初は呆れと疲れを含んで。
2度目は安堵のため息。
唇は弧を描いている。

なんだ、心配しなくても、


「ちゃんと縮んでた………」


手は冷たいのに、腕の中はあったかい。
クロスのぬくもりにもういいや、と抗うのをやめ、目を閉じた。

段々と騒がしくなってくる周りが妨げるから、眠ったりはしなかったけれど、

にやついた顔を見られず済んだのは、私にとっては幸運だった。

最後はDとかアダムが潜り込んで来たり、
アイリスが乗っかったり、
おとんの雷が落ちたり、
帰って来たアレクとオズが鼻血吹いたり、

もみくちゃになって、

知らない間に皆疲れて眠ってた。


夜中に目が覚めた時、
散らかった部屋で、
沢山の転がる人影に、
手を握るぬくもりに、
寄り添う熱に、
鼻の奥がつん、とした。




















(身体にも、心にも)
(それが1番)
(勿論皆で、だけどね)


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