変な既視感に首を捻る私の隣で、俯きがちなアレクが、ひとつ喉を鳴らした。


「……べ、別に偶にならいーけど」

「………ごめん。何が?」


お? おおお?
顔が、みるみる………


「だから、偶になら触らせてやるって言ってんだよ」

「………きゅん」

「は?」


膝を抱えて蹲っている私の隣、片膝を立ててそれを抱えるようにして、片腕を回し、膝の上に顎を乗せているアレク。
その顔は真っ赤で、口調は荒いけど、ボソボソと恥ずかしそうに俯き加減で口を動かす。

思わず口から飛び出る程に私の中の乙女レーダーが反応した。


「ごめん、やっぱ、可愛いよアレク……」

「嬉しくねーよ!」

「だって、可愛いんだもん………ぽわん、てなるんだもん」

「ぽわんて………お前のが可愛いじゃねーか」

「はは、んな馬鹿な………ん?」


え? 何今の。
空耳?


「お前のが可愛い」

「……は? え?」


アレク? これ、アレク?
偽物? 何の為のフェイク?


「偶に触らせてやるから、おれにも触らせろ」

「わ、」


膝を抱えていない方の手が伸びて来て、頭から頬へと滑る。

アレクは耳まで赤くて、だけど私を真っ直ぐ見つめるから。


「〜〜〜〜〜」

「柔らけ……ほっぺたに綿でも入ってんじゃねーのかコレ」


ドキドキして、顔が熱くて、アレクが見れない。


「おま……なんつー顔して、っ、」

「あっ」


段々と、俯いてゆく私の頬から指が滑り、顎を上げる。
真正面に、アレクの顔。
いつの間にか、覗き込むように、床に手を着いていた。

つり目がちな琥珀色の瞳が、僅かに揺れて、あんまり綺麗だから、つい見惚れた。


「……………」
「……………」


ゆっくり近づく琥珀色に魅せられて。


そして、


「ふお!?」
「!!」

「救出かーんりょー!」


脇の下に何かが差し込まれたと思ったら、グン!と後ろに引かれ、テーブルから引き摺りだされた。

後ろを見上げれば、Dがにっこり、笑っていた。
その、一見爽やかな笑顔に凍り付く。


「ディ、ディーノさん?」

「あ、その呼び方懐かしいね」

「な、何を怒ってらっしゃるんですか?」

「んー? ちゅーしてくれたら教えたげる」

「………よし、いけオズ」

「馬鹿じゃねーのお前!?」


いやだって、そこに居たから。
つか貴方も貴方で何をそんなにぶすっとしてるんだ。


「俺様がいくら魅力的でもそっちの趣味は無いんだー。ごめんね風君」

「あら、残念だねオズ」

「なんで俺が振られたみたいになってんの!?」


だって、そこに居たから。


「………訳の解らない争いは済んだのか」


まだ頬の赤いアレクがテーブルから這い出てきた。


「全然? 君のとこの美人さん、破壊の限りを尽くしてるよ。それにー、」


ああ、リディアさん………貴方が被害総額を増やしてどうすんですか。
キビトさんとシオンと三つ巴って貴方……。

あれ?


「ね、ねぇ、クロスは、」
「ギャァアアアアア!?」

「……………チッ」

「クク、クロス!? なんでアレクに……」

「あは、それにー、こっちはこっちで、」

「第2回戦の始まりだ」

「は? え? なんで?」

「ほんじゃ、ま、抜け駆けした罰を与えましょーかね」

「おっしゃ! ぶっ殺す!」

「ちょっと! なんでよ!」

「ウギャァアアア!」

「…………刻む」


いつになく怖いなクロス………てか、駄目だ。
また私、空気にされてる。


「……………帰っていい?」


仕方なく、収まるまで店の外に避難。


店の入り口で、頬梃着いて、夕焼けを眺めていたら、

通りすがりのおじさんに飴を貰いました。

涙が出そうでした。









毎日が事件







(赤髪君さぁ、諦めてくんない?)
(………嫌だ)
(競争率高過ぎだな……)
(じゃぁ風君諦めてよ)
(冗談)
(だよねー。無口く、)
(………(首横にブンブン))
(だよねー……)

<< >>
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -