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委員会が長引いてしまった。上級生は雑務を一年生に押し付けて帰ってしまったので、物慣れない一年生のみで作業することになったのだ。
今まで授業が終わるとすぐ学校を出ていたため、こんな時間に帰るのは入学以来初めてかもしれない。


いっぱい働いた後はお腹が空くもの。校門を出るときに思いたち、コンビニでお菓子でも買って帰ろうと決めた。
そして場所は学校近くのコンビニ。自動ドアの前に立ったところで私は気づいた。
雑誌コーナーで黄瀬くんと日焼けした男の子が立ち読みしている。彼はたしか紫原くんの隣の席の子だ。
こっちに気づいてないみたいだし、雑誌に熱中してるようだったから声は掛けないでおこう。レジの前を通り抜けて、なかば日課のようになっている新作お菓子のチェックに向かった。


「あーみゆちんじゃん」


駄菓子コーナーにしゃがんでいたのはなんと紫原くん。黄瀬くんたちを見つけたときからもしかして、とは思ったけど、まさか本当にいるとは。


「紫原くん、部活帰り?」

「そんなとこー」


紫原くんの足元に置かれたカゴには、新作のポテトチップスやらポッキーやらが一杯入っていた。その余りの量に、彼の一ヶ月の食費はどうなってるんだろうと要らぬ心配をしてしまった。

紫原くんが再びお菓子を選びだしたので、私もなんとなく隣にしゃがんだ。


「ほら、やっぱりねーんだよ。ブラックサンダー味」

「ほんとだ」


彼が見てたのはチロルチョコの棚で、並んでいるのはお馴染みのミルク味や苺味に季節限定のさくらんぼ味のみだった。
紫原くんは「しょうがないなー」と言いながら季節限定のほうを5つほどカゴに入れると、会計に向かった。

目の前であんな沢山のお菓子を見たらなんだかお腹一杯になってしまって、私は買おうと思っていたクッキーを諦めることにした。













「アララ?あいつらいなくなってるし」


紫原くんが会計を済まして戻ってくると、雑誌コーナーに二人の姿はない。
実は彼がいない間に私に気づいた黄瀬くんが、グラビアに熱中する日焼けの男の子を急かして慌てて帰っていったのだ。


「うん、なんか急いでるみたいだったけど…」


去り際に黄瀬くんにウインクされた気がしたんだけど、気のせいかな。何か勘違いされてるような気がしないでもない。


「まぁいーや。帰ろっか」

「紫原くんは家どっち?」

「ん〜、てかみゆちんは?どっち?」

「私はあっちのほう」

「じゃー俺もそっち」

「え?」

「ほら行くよー」


買ったばかりのポッキーを開けながら、紫原くんは私の家のほうに歩き出した。
紫原くんも同じ方向に帰ってくれるなんて。まだ日は長いとはいえ、この時間に一人で帰るのは何かと心細かったのだ。

歩幅の広い彼を速足で追い掛けて、隣に追いつく。この見慣れた通学路を紫原くんと並んで歩く日がくるなんて思いもしなかった。

赤から黒に変わりたての空を見上げると、控えめな一番星が鈍い光を放っていた。






星が生んだ指
130316
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