※下品







この日もいつものように紫原の部屋にあがって、ゲームして、お菓子食べて、ちょっといちゃいちゃして、いつも通りに過ごしていた。
で、今は長めのキスの真っ最中。この辺までは、まぁ、いつも通り。

ただひとついつもと違ったのは、紫原の手が私の服の中に入ってきたということだ。ごくごく自然に侵入してきたその大きな手は、私の脇腹を滑って背中に回った。

「っわ!!」

私が飛びのいたら紫原は、どうしたの?とでも言うようにしれっとしていた。

「なに急に…!」
「えっちな事しようと思って?」
「えぇ、えっ、……え!?」
「やなの?」
「いや、じゃないけ…ど…」
「はいじゃあばんざーい」
「待って待って!」

パーカーの裾を持ち上げようとする紫原を慌てて制止した。

「んだよー」

言い出したら聞かない紫原のことだ。
私が覚悟を決めるしかない。

「‥‥今心の準備するから、ちょっと待ってて」

私はそう宣言して立ち上がった。


ひとまず紫原と距離を取るため、部屋の隅にあるベッドに上がる。余計危険な気もするが、紫原から離れないことには落ち着いて気持ちの整理もできない。

「それどんくらいかかんのー?」
「15分」
「なっが。まじかよ」

広いベッドの上の脱ぎ散らかしたジャージとか、空になったお菓子の袋を全部床に落として、私はベッドの中央に体育座りした。
ひざ小僧におでこを乗せ私は考える。福井先輩に「あんま焦らしすぎると爆発するぞ」と忠告されたのを思い出した。爆発されては大変だ。

そっと顔をあげてみると、紫原は飽きたのかポテチを頬張りながらテレビを見ていた。その後ろ姿は、とうてい爆発寸前には見えない。

(ほんとにしたいのかな…)

小さく溜め息をつく。
そして部屋中を見回して思ったけど、紫原の部屋はやっぱり汚い。床にまでお菓子が散らばっている。
何気なく、その中にあったひとつを手にとってみた。未開封の小ぶりな箱。
なんだろう。クッキーかな?チョコレートかな?チョコレートだったら食べちゃおう。

「………」

パッケージを見た私は言葉を失った。何故なら、それは避妊具の箱だったのだ。

しかも、

「え、えるえる…?」

LLサイズと書いてある。確かに書いてある。だって、そんな、え…?

「あーそれ?」

ばっと顔を上げると、テレビを見てたはずの紫原がすぐ目の前に。なんていうタイミング。紫原は私から箱を取り上げると、どしっとベッドに腰掛ける。

隠していた(?)コンドームが見つかったというのに、いたって冷静だ。まいう棒片手に説明書きなんか眺めてる。

「なんか普通のやつにしたら破れたんだー。ウケるよね〜」

‥‥全然ウケないんだけど。
野生のカンなんて持ってる自覚はなかったけど、今自分の身に危険が迫っていることは確実だった。
私の貞操はどうなってしまうんだろう。

「そろそろいい?」
「えっ、待ってまだ…」
「もう無理」

ベッドがぎしりと鈍い音を立てる。
残りのまいう棒を一気に飲み込んで、紫原の腕が私を捕らえた。

「じゃあ上、脱いで?」

そう言って私を覗き込んだ紫原の目はいつもと違ってて、いつものお菓子しか興味ない紫原じゃなくて、なんかもう、爆発しそうになった。私が。




130124
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