※帝光








「ねーねー、あくまでイッパンロンを聞きたいんスけど」

「……」

「…なんですか」

「えっちって、付き合ってどれくらいでするもんなんスかね」

「黒ちんポテト食う?」

「あ、頂きます」

「いや聞いてよ!」


思わずイスから立ち上がってしまった。
向かいあって座っていた黒子っちがめんどくさそうな顔で見てきた。相変わらず冷たい。ぐすん。紫原っちも指に付いたポテトの塩に夢中だし。


そもそもなんでこんなメンツでいるかというと、いつもの練習帰り黒子っちと紫原っちがマジバに寄ると聞きつけ、ならばオレもと着いて来た次第だ。二人は期間限定のシェイクがお目当てらしいけど、もちろんオレはシェイクとかどうでもよくて。(まぁ飲んでるけど)


「オレ最近彼女できたって言ってたじゃないスか。そのことなんスけど」


そう。最近付き合い始めた可愛い彼女のことで、どうしても聞いてほしいことがあったのだ。


「黄瀬くんに彼女…紫原くん知ってました?」

「ぜーんぜん」

「えぇ報告したじゃないスか!先週!電話で!」

「…(リアクションうるさいな)冗談ですよ、覚えてますって。あの、隣のクラスのなんとかサンですよね」

「よかったー覚えててくれて!うろ覚えなのが若干気になるっスけど」

「ねー黄瀬ちん食べないならそれちょーだい」

「紫原っち、話聞こう!」

「ちょー聞いてるし」




△▼




「ええと…つまり黄瀬くんは、どのタイミングで彼女さんを誘えばいいのか悩んでいるということですね」

「そうそう!そうなんスよ」

「で、手を出したくて出したくて毎日悶々としていると」

「黄瀬ちんきもーい」

「そこまで言ってないっス!!」


あながち間違ってないっつーか割とそれが真理だったりするんだけど、そんな言い方されると!なんか違うってーか!


「もっと真剣に相談乗ってほしいっス〜」

「えーだって黄瀬ちんのセックス事情とかキョーミないし」

「紫原っち、マジチーズバーガーとポテトのLとアセロラシェイクとアップルパイ奢ってあげたのは誰っスか」

「やっぱりそういうのはカノジョの気持ちを尊重しないとだよね」

「俄然やる気っスね」


ちょろいな。
とりあえずワイロとして、自分の分のチキンナゲットをふたつほど紫原っちにあげた。あと2時間は話きいてもらおう。


「ちなみに高校生だと平均一週間、遅くても一ヶ月以内にはするらしい」

「どこ情報なんですかそれ」

「雑誌の特集っス」

「へーじゃあもうやっちゃえばー?」

「それでいいと思います」

「あはは、黒ちん投げやり〜」

「黒子っち〜!」

「で、カノジョはどーなの。嫌がってないの」

「あっそういえば、最近あっちからもべたべたしてくるようになったっス!」

「じゃあすぐやれちゃうんじゃんー?」

「だと良いスけどね」

「へーよかったじゃん。胸デケーし」

「そうそう!ああ見えてけっこう…ってなんで知ってんスか」

「峰ちんがちょー揉みてぇっつってた」

「うっわ最悪、人の彼女そんな目で見ないでほしいっス」

「デカさなら学年でベスト10は固いーって」

「あーちがうちがう。ナマエっちの良さは大きさじゃなく形の良さっスよ〜青峰っちもまだまだっスね〜」

「聞いてませんけど」

「あとあの触り心地。あれは今までオレが触った中でベスト3には入るっスね。弾力が違うってか、」

「あ…」

「うわ」

「?どうしたんスか…」


急に食べる手を止めた二人の視線は、オレの頭頂部さらにやや上へと向いていた。
手に持ったシェイクをテーブルに置き、恐る恐る振り返る。


「…ナマエ…ちゃん」


オレの真後ろには、今まで見たことないくらい無表情のナマエちゃんがアセロラシェイク片手に立っていた。


「……涼太、最低」


それから一ヶ月、えっちどころか手さえ繋いでもらえなかった。泣いてもいいかな。







130222
黄瀬はたぶん黒子と恋バナしたかっただけ
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