十四松くんと自然消滅して2年後くらいに突然電話が掛かってきて付き合ってたときと変わらないトーンで淡々と会話したい。


「女の子殴っちゃった」
「え」
「どかーんって」
「女の子を?」
「うん、彼女。今の」
「大丈夫なの、その子」
「たぶん。生きてるし」
「そうか」
「そんで殴り返されて鼻血止まんない」
「うん」
「鼻血出たときって、上向くんだっけ」「鼻血か…しばらく出てないな」
「それを聞きたくて電話したんだけど」
「たしか下を向くんじゃないかな。眉間の、少し下のとこを押さえて」


「なんで手あげたの。嫌なら言わなくていいけど」
「嫌じゃないよ。〇〇が、あ、彼女ね。その子が、トマト嫌いって言ったから」
「トマト」
「うちのベランダで育ててたプランターあったじゃん。ナマエと一緒に買ったやつ。あれを勝手に捨てたの」
「うん」
「あんな汚いのいらないって言うから」


「気づいたら、グーで」
「グーはまずいね」
「彼女壁の端っこまで飛んでって。それであ、やっちゃった、て気づいた」
「うわあ」
「すぐにテレビのリモコンが飛んできて目に当たって。痛ぇと思ってたら、彼女が電気ケトル持ってこっち歩いてきて。そのまま顔の真ん中にばーん、て。『きもい』って言われた」
「自業自得だね」
「あんなに毎日好き、好き、て言ってたのに、最後の言葉がきもいって」
「あはは」

「おれ、きみがいないと何もできないんだよね」
「私?」
「うん」
「なんで私が出てくるの。彼女がいたじゃない」
「いたけど。何もできてなかった。朝も起きれないし、すぐ靴下片方なくすし」
「うん」
「デートとか、色んなとこ連れてけないし」
「うん」
「トマト枯らしちゃうし」
「……」
「どうしようもないね」
「今、十四松のアパートの前に来たんだけど」
「そう」
「ベランダ相変わらずだね」
「掃除してないからね」
「トマトの鉢、やっぱ汚いよ」


「私でも捨ててたと思う」
「そうかな」
「私のことも殴る?」
「殴らないよ」
「そっか。……………髪、伸びたね」


「ナマエは短くなったね」
「先週切ったの」
「…久しぶり。あがって」
2年前まで毎日嗅いでいたにおいが、ふわ、と香った。


160828
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