じりりり、

「……」

じりりり、じりりりり

「………」

じりりりりりりり
じり、

「だあああああ!うるせええええ!!」

読んでた書類の束を放り投げ、俺は隣の部屋の扉を叩いた。









恋せども乞いせども
第七話









「…で、」
「……」
「昨日遅くまで残業頑張った自分へのご褒美として朝まで飲んだくれて、べろべろになって帰ってきてそのまま就寝、起きたらこの時間になっていた …と。これで合ってるか? なまえちゃん」
「その通りでございます」
「俺はな、他人の生活とか興味ないし口出しする気もない。だかこれだけは言わせてくれ」
「…はい」
「この部屋は何なんだ」

時計は午後1時半を指している。それはたったさっきの事、山崎から送られてきた資料に目を通していると隣の部屋からけたたましい目覚ましの音が聞こえてきた。もちろんこいつのせいだった。

一発がつんと言ってやろうと部屋に乗り込むと、床は足の踏み場が無いくらいの洋服と敷きっぱなしの布団で埋もれ、机にはいつ飲んだかわからないようなビールの空き缶が散乱していた。

「お前 どうしたらこんななるんだ」
「えっと、愛のままに我が儘に生きてたらこんな具合に」
「お前は頭がウルトラソウルしてるもんな」
「っありがとうございます!」
「褒めてないんだけど」




「で、片付ける気はあったのか」
「明日やろうと思ってました」
「言い訳する奴って必ずそう言うよな」
「聞いたのそっちじゃないですか!理不尽だ!」

まだ酔いが抜けてないのか赤い顔で抗議する。そんななまえを一瞥して、俺は部屋を見渡した。

「うし、片付けするぞ」
「え?」




______




それはそれは言葉では言い現せないほど壮絶だった。2時間の掃除の結果出たゴミの量は、俺が一週間で出すそれをはるかに上回っていた。

そして今、綺麗になった部屋で俺は茶を飲んでいる。なまえはというと、二日酔いにも関わらず働きまくったせいでベッドでダウンしていた。

「あぁー私もうだめです 多分しにます」
「二日酔いでか」
「そんくらい頭痛いっす」
「しばらく寝たらどうだ 夕飯には起こしてやるよ」

なまえがうつぶせになるベッドに腰を下ろして、頭をぽんぽん叩いてみた。…髪、やわらけぇ。

「やですよ、今寝たら十四郎さんになんかされる」
「そうだな。するかもな」
「うっわ、セクハラ発言」
「正直に答えただけですぅ」
「余計タチ悪い。林田さんに言いつけますよー」
「何て言うんだよ」
「十四郎さんが最近いやらしいですーって」
「…否定できねぇな」
「なんですか。発情期ですか」
「んなことねぇよ。俺は普通だ」
「覚えておこう。十四郎さんは常に発情期、と」

何言ってんだ、となまえの背中を叩く
ついでに、腰のラインをさりげなく撫でてみた。

すると間髪入れずになまえの拳が太ももに落とされた。どうやらさりげなくなかったみたいだ。

「って!!」
「スイマセン、脚がちょうど目の前にあったもんで」

舌打ちして渋々と手を引く。あー太もも痛ぇ。

「お前もっと可愛く抵抗できねぇのかよ」
「可愛く? ……うーんと…ジャーマンスープレックス?」
「それ凶悪さが増してないか」
「えー名前可愛くないですか? すーぷれっくす」
「言い方の問題だろ」
「ひらがなっぽく言うと何でも可愛くなりますよね」
「いや、わかんねぇよ」
「うーんと、そうだな例えば…」


「…とうしろう」
「……」
「とーしろーとーしろー」
「ね 可愛くないですか、 とうしろうさん」

ごろ、と寝返りを打って見上げてくるなまえ。
うん、まあ、たしかに。ちょっと、かわいいかもしれない。










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