もともと彼は苦手なタイプだった。社会に属している以上、協調や調和を第一に今まで生きてきたし、これからもそうだと思う。だからあんなに自分勝手に振る舞う人間がいることは、私にとって信じられなかった。
しかし審神者という役職故、編成に私情を挟むべきではない。練度や戦況に応じて、どうしても頼らなければならない場面は訪れるのだ。
「なんであんな真似したの?」
大倶利伽羅を隊長にして、厚樫山に出陣したときのことだ。隊長の彼だけが大怪我して帰ってきた。陣形を守らずに勝手に突っ走ったらしい。
「次から勝手な真似したら第一部隊から外すから」
「ふざけるな。俺はこれからも隊長をやる」
「持ち主の言うことも聞かない刀を使うと思う?とにかく、明日の出陣はなしだから」
何を言っても「俺は戦いたい」の一点張り。これでは堂々巡りだ。もう取り合わないという姿勢を見せて、その場を立ち去ろうとした。どん、と鈍い音がした。

「まだ話は終わってない」

私の行く手は長い脚で阻まれてしまった。蹴られた木の柱が鈍く軋んでいる。
「アンタはいつもそれだ。マニュアル通りの指示しかしない。実際に戦場に出たこともない奴に、わかって堪るか」
何も言い返せなかった。
ただ立ち尽くして去っていく大倶利伽羅の背中を見送るしかできない私は、なんと不甲斐ないことか。
言い争いを聞きつけたのか、庭で遊んでいた何人かが駆け寄ってきた。
「あるじさまだいじょうぶですか」
「大倶利伽羅になんかされた?」
私は弱々しく笑って、「ううん、なんでもない」と言った。
下手に動揺を与えてはいけない。人間関係に波風は立てたくない。こんなこと考えるから大倶利伽羅に嫌われちゃうんだよ、と頭の中でもう一人の私が言った。大声で泣けたらどんなに良かったことか。


150920
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