彼女の笑顔が好きだ。彼女が笑えば、憂鬱だった気持ちもどこかに行ってしまう。
彼女の声が好きだ。名前を呼んでもらうだけで、難しい勉強も、面倒な仕事も、頑張ろうって思える。
彼女が一緒にいるだけで、世界はきらきら輝き出して、眩しいくらいに色付いて見えるんだ。彼女はまるで、魔法が使えるみたいだった。
「黄瀬くん!」
ぱたぱたと上履きを鳴らして、彼女が来た。
「ナマエちゃん?」
「これ」
顔いっぱいの笑顔で差し出されたのは、包装も何もされていない、型に入ったままのマフィン。
「さっき調理実習で作ったの。冷めないうちに、あげる」
受け取ると、本当にまだあったかい。もしかして、片付けもしないで走ってきたのかな。俺に早く食べさせたくて。そう考えたら自然と顔がにやけちゃって、いけない、俺はクールにかっこよくいたいのに。
「ありがとう。ちょー嬉しいっス」
でもやっぱりにやけちゃった。彼女もにんまり笑う。
「黄瀬くんが笑ってるの、好き」
「え?」
マフィンが手から滑り落ちそうになる。
「きらきらしてて、見てるとすぐ元気になっちゃうの。魔法みたい!」
そう言って彼女が笑うから、目の中がちかちかした。
そっか、俺も魔法が使えたんだ。
少し赤くなった彼女の頬も、俺の魔法のせい?だったら、修行でもなんでも、俺いくらでも頑張るよ。
140201
Magic Of Love/Perfume