守衛エクボ


浮き出た肋骨が上下する。汗の粒がなだらかなそこを伝って落ちた。重そうに揺れる肩や胸は薄く筋肉が付いていて、しがみつくと跳ね返されるような硬さだった。彼はどこもかしこもふにゃふにゃの自分とはまるで違う生き物なのだ。

「エクボ」

名前を呼ぶと目だけで応えられる。私が寂しがってると思ったのか、耳やこめかみにキスが落とされた。優しいのか乱暴なのかわからない。眉間に刻まれた皺に不釣り合いな優しい目元が私は好きだった。
始まりはエクボの気まぐれだったと思う。人間の体に入って過ごすうち、生き物としての欲求が沸いてきたとかなんとか。元来の好奇心旺盛な性格に、ちょうど良く押しに弱そうな若い女が近くにいたという条件も加わり、いつの間にかこのただれた関係が始まったのだ。
以来、私たちは暇を見つけては人目を盗んで身体を重ねていた。無理矢理こじ開けられたそこも、何度も繰り返すうちに彼の形にぴったりと合う器に変えられてしまった。どこをどうすれば私を喜ばせられるか、自分が良くなれるか、すっかり一人前の男の感覚を取り戻したようだった。
エクボは私を悪い大人に良いようにされる可哀想な女だと思っている。それでいいのだ。私の気持ちを知ったら、優しい彼は、きっとこの関係を止めてしまう。

「ナマエ、もっと脚開け」

ふいに名前を呼ばれて、硬く閉じていた瞼の力が抜けた。何か反応する間も無く一段と硬さを増したそれが奥を抉ってきた。

「や…っ待って…!」
「待てねぇよ」

ずっと奥の方を擦られていたと思ったのに、更に深く入り込もうと腰を進めてくる。じゅぷ、と恥ずかしい音がして、胃が押し上げられる感覚に襲われた。もう無理…と目で訴える。エクボは緩く口角を上げると下半身に手を伸ばした。ぎちぎちに広がったそこ、ではなく、赤く腫れ敏感になった突起を乱暴に指で押し潰した。

「ひゃん!やだ、それ…!」
「おお、締まった」
「やだ、痛くしないで…」
「痛い奴の反応か?ここ気持ち良さそうだけど」

ざわざわとせり上がってくるものに唇を噛み締めて耐える。エクボのそれが奥を抉って入り口を掠める度、早く終わってほしい気持ちとこれが永遠に続いてほしい気持ちがないまぜになってわけがわからなくなる。筋張った手が私の乱れた前髪を掻き分けた。切なそうに細められたふたつの目と視線が絡まる。

「出していいか?」

散々好き勝手したくせに最後だけ私に委ねるなんて狡い。そんなに切羽詰まった顔で聞かれたら断れるわけないじゃないか。首を縦に振るのもなんだか悔しくて、無言でしがみつく。拗ねた子供をあやすかのように、エクボの手が優しく頭を撫でた。

「ナマエ 、」
「ん…」
「他の男の子供孕んだら許さないからな」
「無茶言わないでよ…」

私の太ももを生暖かいのが伝う。どこの誰かも知らない男の身体で、エクボはまた私を抱くのだ。


title:自慰
160826
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