毎日が同じ繰り返しだった。仕事をしてへとへとになって家に帰り、スーパーで買った半額の弁当を食べて布団に入る。外が明るくなり始めると自然に目が開いて、のそのそと準備をしてまた会社に向かう。いくら寝ても疲れは取れなくて、ああまた明日が来てしまうのか、と、いつしか眠りにつくのすら怖くなってしまった。
そんなある日だった。信号待ちの最中、怪しげな広告が目に止まった。

「添い寝代行サービス…?」

安っぽい二色刷り印刷のチラシに書いてあったのは、「添い寝代行サービス」の文字。他には電話番号、そして「快適な睡眠を貴方に」という誘い文句のみ。見るからに怪しさしかない。風俗店のチラシに埋もれるようにして電柱に貼り付けられたそれは、普段だったら目にも留めなかったであろう。

魔が差したとしか言いようがない。気づいたら私はその番号をメモしていた。






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電話に出たのは、誠実そうとも不真面目そうとも言えない普通の男だった。住所を教えるのに些か不安はあったものの、添い寝を頼むのにホテルを取るのもなんだか違う気がして、アパートの部屋番号を伝えた。電話を切った後なんとなく落ち着かなくて、大して洗濯物も溜まってもいないのに洗濯機を回してしまった。
シャワーはすでに浴びた。別に何をするわけでもないけれどいつもより時間を掛けてしまって、いやいや、エチケットとして一応ね、と誰も聞いていない言い訳を頭の中で何度も繰り返した。
半年前に彼氏と別れてからはそういうこととも遠ざかっていて、当然異性と添い寝するのも久しぶりだ。
余裕を持って1時間後に来るようお願いしたけれど、失敗だったかもしれない。妙な緊張感のまま時計の針だけが軽快に音を立てていく。
30分は経っただろうか。チャイムが鳴った。想像よりもだいぶ早い到着に心の準備が追いつかない。その間も一度、二度と鳴るチャイムに急かされ、慌ててインターホンに返事をして扉を開けた。
アパートの狭い廊下には、同じくらいの年頃の若い男の人が立っていた。
「ジュウシマツです」


160522
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